はじめに

中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。

首都圏では、根強い人気を誇る公立中高一貫校。高倍率、高偏差値で「私立中学以上に受かるのが大変」というイメージを持っている人も多いことでしょう。

公立であるにも関わらず、「対策なしでの合格はまずない」と言われる理由とは?その人気の秘密についてお二人に教えていただきます。

今回の中学受験に関する数字…一都三県22校


高い人気の公立一貫校、東大合格が二桁の学校も

<タカの目>(高橋真実)

首都圏にある公立中高一貫校(以下公立一貫校)の数は現在22校。内訳は、埼玉3校、千葉3校、東京11校、神奈川5校です。

公立一貫校の先駆けは埼玉県立伊奈学園中学校で2003年の創立。伊奈学園総合高等学校に併設するかたちでスタートしました。公立一貫校には、完全一貫型の中等教育学校と、伊奈学園のように高校からの入学生もある併設型の2つのタイプがあります。

その後、2005年の都立白鴎高等学校附属中学校を皮切りに、公立一貫校が次々と開校していきます。特に「6年一貫教育に興味はあるけど、私立はコスト的にちょっと…」というご家庭を中心に人気が高まっていきました。

選抜方法は適性検査型入試と小学校からの報告書によるもので、早い時期から塾に通って受験対策をすることに抵抗感のある保護者をとらえたことも人気の要因の一つとなりました。

その後、東大をはじめとする難関国立大や早慶への進学実績が出ることで、ますます人気が高まります。今年、都立小石川中等教育学校では16人(1学年約150人)が東大に合格しています。また、首都圏のほとんどの公立一貫校が東大合格者を出しています。

公立一貫校の人気は中学受験全体に影響を与える

このような実績もあって公立一貫校の人気は定着し、当初ほどではないものの、最近でも4~7倍と高い実質倍率になっています。特に女子の倍率が高いのが特徴です。

そして、高い人気によって偏差値も高くなっています。たとえば、都立小石川中等教育学校では男女ともに66、千葉県立千葉中学校では男子65、女子66とかなりハイレベルになっています(偏差値は四谷大塚による)。

こうした公立中高一貫校人気は、様々な面で中学入試に影響を及ぼしています。
 
1つは、私立中学での適性検査型入試の広がりです。公立中高一貫校の人気が高まるにつれ、私立中学では、同様の適性検査型入試を行う学校が増えました。これによって、公立と私立を併願する受験生や、公立の「お試し」として私立中学を受験するケースが増えました。

公立一貫校受検に対応したクラスを持つ塾の中には、公立一貫校不合格者の1/3が私立中学に進学するというところもあり、私立中学にとっては、新たなチャンスが広がったとも言えます。

もう1つの影響は、地域の進学価値観の変化です。公立一貫校ができるまで、ほぼ無風状態と言われていた地域で「中学を受験する」ということへの意識が高まり、中学受験そのものが活発になったところもあります。

倍率、進学実績と、話題の多い公立一貫校ですが、本来の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

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