はじめに

建設業界の業績動向を分析するには、受注高や今後どれくらい仕事を持っているかという手持ち工事高を見るのが原則です。直近の状況を見ると、受注高、手持ち工事高とも好調に推移しています。各ゼネコンの状況を分析してみたいと思います。


受注総額は3年連続で増加

国土交通省によると、2018年度の建設大手50社の建設工事受注総額は、前年度比6.5%増の15兆8,590億円となり、3年連続で増加しました。

内訳を見ると、国内では公共工事が減少したものの、民間工事の増加でカバーしたことから6%増の15兆2,102億円。海外ではシンガポールやインドネシアなど、東南アジアを中心に受注を獲得し、17.2%増の6,488億円となりました。

工事種類別で見ると、土木工事は上・下水道や土地造成などが減少して3%減の4兆8,009億円となり、3年ぶりに減少。建築工事は大学校舎の新・増設、都市部でのビル建て替え、医療・福祉施設の増加などで11.2%増の11兆581億円と、8年連続で増加しました。

一方、建設大手50社の2018年度末時点の手持ち工事高は、前年同期末比6.6%増の18兆1,913億円で、6年連続で増加。平成に入った1989年度以降を見ると、建設大手50社の年度末の手持ち工事高は、1991年度の26兆5,314億円がピークでした。公共工事の減少などで2009年度には11兆3,787億円まで落ち込み、ピーク時に比べ6割近く減少しました。


大手建設50社の手持ち工事高

その後は、2011年3月に東日本大震災が発生したことによる被災地の復旧・復興工事のほか、2020年東京五輪・パラリンピックの選手村や競技場など関連施設の建設、首都圏を中心とした都市再開発事業などの大型案件を相次いで受注したことから手持ち工事高は回復傾向にあります。

新国立競技場は11月末に完成予定

ここで、大手総合建設会社(ゼネコン)の受注状況を見てみましょう。大型土木工事に多くの実績をもつ大成建設(1801)は、2019年3期末時点の手持ち工事として、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設に加え、江東区豊洲2丁目駅前地区の再開発など大型案件を抱えています。このうち、新国立競技場は今年11月末に完成する予定です。

大阪地盤で首都圏でも積極展開する大林組(1802)は、19年3期にJR九州熊本駅ビルの新築、港区白金1丁目東部北地区の再開発、東京女子医大東医療センターの移転などを受注しています。

また、民間建築工事に強い清水建設(1803)は、19年3期に港区虎ノ門・麻布台地区市街地の再開発や、インドネシアでの水力発電所の土木工事などを受注。高層建築工事に強い鹿島建設(1812)は、千代田区大手町の大規模複合開発、シンガポールでは複合開発工事などの大型案件を保有しています。

このほか、基礎・地盤改良、斜面・法面補強など特殊工事を得意とするライト工業(1926)は、地震や台風など自然災害被災地の復旧・復興工事を受注。今後は、こうした手持ちの大型工事が完成することから、大手ゼネコンを中心に建設業界の業績は高水準を維持すると思われます。

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