はじめに

イグノーベル賞の「スピーチジャマー」をキット化

7月26日には、スピーチジャマーでイグノーベル賞を受賞した津田塾大学の栗原一貴教授と、はこだてみらい大学の塚田浩二准教授の研究を応援するプロジェクトがオープンする予定です。

1つは「実用化は難しい」とも言われていた、スピーチジャマーをキット化するという内容です。スピーチジャマーは、ある人が話している音声を、少しだけ遅らせて本人に聞かせるとしゃべれなくなることを利用した装置。キット化して教育などに使ってもらうことを検討中といいます。

もう1つは、研究自体を支援する内容です。研究報告書、研究発表の動画を閲覧する権利、研究日記のメルマガなどに加え、9月に米国で開催されるイグノーベル賞の授賞式を栗原教授がリポートする、というリワードを想定しています。

栗原教授は滞在中の米国から寄せたビデオメッセージで、「私どもが行っている研究は、ちょっとおもしろおかしい形をとりながら、人々に考えるキッカケをもたらすようなもの」と語り、「すぐ売れるから、あるいはすぐに社会の役に立つから予算をください、というような、従来的な資金調達の方法では苦戦することがけっこうあります」と参加に至った経緯を明かしました。

書籍やサイトへ起用の可能性も

クラウドファンディングサービスが数ある中、出版社として新たに挑む理由について、ブルーバックス編集チーム長の篠木和久さんは、「ただ資金を集めるだけでなく、研究者支援に主題に置いています。立ち上げたプロジェクトを講談社のさまざまなメディアで告知もできる」と話します。

○○○

「個々人の研究資金は決して潤沢ではない状況だと研究者の方々に聞いています。また、研究者がアイディアを形にしたいとき、公的な研究資金に馴染まないものが多々あると、ブルーバックスの書籍を編集する中で気付かされました。研究者や技術者と応援したいユーザーをマッチングさせることで、科学研究に資することできれば」(篠木さん)

長尾さんによると、同プラットフォームの手数料は、一般的なクラウドファンディング業者と比べて、同等ないし低めの割合に設定しているそう。その理由は、プロジェクト成立のみが目的ではなく、応募者をブルーバックスのサイトや書籍へ起用する可能性も長期的に見込んでいるため。

直近の目標は、毎月3〜4件のプロジェクトがサイトに上がっている状態の実現。事業としての収益やプロジェクトの金額より、「一個一個のプロジェクトが達成すること自体に意味があると考えている」といいます。

かなり後発のサービスが市場で一定の地位を確立できるのか。まずはスピーチジャマーのプロジェクトが成立するかどうかが、今後を占う試金石となりそうです。

この記事の感想を教えてください。