はじめに

アナリストは営業利益の進捗を見る

決算が出ると、アナリスト・機関投資家が最初に注目するのは「営業利益」です。ニュースでは前年同期に対しての増減が示されますが、私たちは今期の会社予想もしくはコンセンサス予想に対してどうだったかを見ます。コンセンサス予想とは担当しているアナリストの業績予想の平均値で、日経クイックなどの市場情報サービスで入手することができます。

複数企業を比較する場合には、「進捗率」を使うのが一般的です。今回は4~6月期で1年の4分の1、すなわち25%を過ぎたところです。通期予想利益100億円に対して、今回が25億円なら25%ですが、30億円なら30%となり進捗が高めということになります。

比較した企業の進捗率を並べてみて、数値が一番高い企業が一番健闘したという評価につながります。水準次第では、次回の決算の上方修正の可能性も出てくるだろうと分析するわけです。

まず営業利益を検証し、次に「当期純利益」も同じように比較します。この2つの進捗状況で、まず「良かった」「悪かった」の第1印象を決めます。

売上高も見ますが、利益面に比べると重要度は低めです。株価への影響が一番大きいのが利益だからです。そして、これらの数字の増減要因を付属資料などから探っていく、という順番になります。

実際には当期純利益ではなくEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を計算して検証するのが一般的ですが、少し専門的なので今回は「当期純利益」としておきます。

堅調な企業もあり明暗分かれそう

7月24日時点で決算発表済みの時価総額5,000億円以上の企業は9社あり、このうちハイテク関連は5社です。営業利益の会社予想進捗率を見てみると、信越化学工業26.5%、日本電産16.0%、アドバンテスト50.5%、日立ハイテクノロジーズ25.3%です。キヤノンは12月期決算(6ヵ月経過)で30.5%です。

日本電産が25%に、キヤノンが50%に届いていませんが、信越化学と日立ハイテクは届きましたし、アドバンテストは大きく上振れています。

キヤノンは通期会社予想を下方修正しました。この進捗率では仕方のないところでしょう。日本電産は第2四半期(2Q)予想を修正したものの、通期予想は修正しませんでした。2Q以降に挽回する見通しを立てているということになりますが、次回はどうなるでしょうか。

残りの3社は世界市場が減速する中でも計画通りか、それを上回るペースで、まずは堅調といえそうです。

こう見てみると、半導体・スマホ市場、自動車市場の減速、中国景気の減速、米中貿易摩擦のマイナス影響、米国景気にも陰りが出て、利下げの見通しが出るなど、世界的に減速傾向が感じられる中、それを受けて下振れ・下方修正となる企業もあれば、必ずしもそうならずにそれなりに健闘しているハイテク企業がありそうです。

今週から8月半ばまでの約4週間の間に、新興市場を含む全上場企業約3,600社の8割に相当する約3,000社の決算が発表される予定です。しかし、本稿を執筆している24日時点では、まだ60社しか発表していません。26日時点でも、まだ累計200社強の予定です。これから出てくる2,800社余り、特にハイテク企業がどうなるか。興味深いところです。

<文:ストラテジスト 田村晋一>

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