はじめに

8月に入り、花火大会などで夜に外出する機会が増えている人も多いのではないでしょうか。

日没から翌朝までの夜の時間帯で行われる経済活動は「ナイトタイムエコノミー」と呼ばれています。大規模な財政政策を行わなくても、規制緩和によって経済効果を生むことができるため、欧米を中心に世界的にナイトタイムエコノミーに注目する国が増えています。

日本でも、日本のナイトライフ(夜のレジャー・観光)を楽しもうとする訪日外国人旅行者が増加しているのに加え、日本人も働き方改革によって仕事が終わった後の余暇時間が増えています。今回は、「夜遊び経済」とも呼ばれるナイトタイムエコノミーについて、考えてみたいと思います。


夜の経済を変えるナイトタイムエコノミー

ナイトタイムエコノミーには、深夜営業の小売店や居酒屋、夜間医療や24時間体制で国民の生活を支えるインフラなども含まれます。

特に注目したいのは、夜の時間帯における演劇、美術や音楽などの鑑賞、文化やスポーツの体験・観戦、飲食など、夜ならではのレジャーや観光の拡大によって新たな経済効果が期待できる点です。劇場などのすでにある施設を、昼だけでなく夜間も有効活用する「二毛作」で経済効果を生み出せることがメリットです。

ナイトタイムエコノミーで先行する米国のニューヨーク市では、バーやクラブのほか、夜に公演するミュージカルやスポーツ観戦など娯楽が充実し、地下鉄は24時間運行しています。英国も、週末は地下鉄の24時間運行を行い、夜の観光を充実させています。

日本での伸びしろはどの程度か

一方、日本は、訪日外国人旅行者にとって観光地として人気はあるものの、夜の観光資源が乏しいという調査結果があります。2018年の訪日外国人旅行消費額(4兆5,189億円)全体に対する娯楽関連消費(娯楽等サービス費)は、たった4%程度にとどまっています。

観光庁は施策の1つとしてナイトタイムエコノミーに注目しており、日本でも取り組みが増えています。近年人気を集める夏のナイトプール、大勢の人が仮装する秋のハロウィーンイベント、冬のナイトスケートリンクなどは、夜遊び経済で消費を喚起する日本のナイトタイムエコノミーの好例です。

東京都では渋谷区観光協会が外国人向けの夜のガイドツアーを行い、大阪府ではナイトカルチャー発掘・創出事業としてナイトタイムエコノミー支援、福岡市では夜のコンサートイベントや夜祭りなどが行われています。

大都市以外でも、日本には文化遺産や伝統行事、花火大会や祭り、特産品など観光資源を持つ地域は多いです。交通インフラの整備や規制緩和、事業者と地域住民の相互理解等は必要ですが、日本全体としてナイトタイムエコノミーを拡大することは可能といえるでしょう。

注目したい関連企業は?

英国・ロンドン市でのナイトタイムエコノミーの経済効果は年4兆円近くあるとされます。対して日本では、東京都だけで潜在的に年5兆円規模はある、との見方があります。

楽天の三木谷浩史社長が代表理事を務める新経済連盟が2016年に発表した資料では、「英国の夜間産業が国全体の約6%の収入を生み出しているとされ、これを日本に当てはめると約80兆円の収入を生み出すことになる」と試算されています。

カジノを含む統合リゾート(IR)が始まれば、日本のナイトタイムエコノミー市場の拡大を加速する可能性が高く、中長期的には大きな経済効果が期待できそうです。

ナイトタイムエコノミーに関連する企業としては、大井競馬場の夜のイルミネーションを刷新し、サマーランドでナイトプールを運営する東京都競馬(証券コード:9672)、一部の店舗で深夜営業のアミューズメント施設を運営するラウンドワン(4680)、深夜営業の小売店舗を運営するドンキホーテホールディングス(7532)などがあります。

また、夜の音楽ライブフェスティバル等を運営するエイベックス(7860)、夜間のスポーツやコンサートの会場を提供する東京ドーム(9681)、英国風パブを運営するハブ(3030)、訪日外国人旅行者に人気の東京・原宿「KAWAII MONSTER CAFÉ」を運営するDDホールディングス(3073)なども注目企業と考えます。

<文:投資調査部 川崎朝映>

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