はじめに
世界の株式相場が荒れ模様の展開となっています。8月5日の米ニューヨーク株式市場は、ダウ工業株30種平均が前週末比767ドル安と、今年最大の下げ幅を記録。これを受けた6日の東京市場でも、日経平均株価が一時、値下がり幅が600円を超えました。
波乱のきっかけになったのは、ドナルド・トランプ米大統領の「つぶやき」です。1日にツイッターで、3,000億ドル相当分の中国製品に対して、新たに10%の追加関税を9月から適用する考えを表明。制裁関税「第4弾」の実施を打ち出したことで、金融市場では米中両国の通商交渉進展への期待が一気に後退した格好です。
トランプ大統領のツイッターのフォロワーは7,000万人超。世界人口は現在、約77億人なので、単純にはフォロワーの人数が100人に1人近い割合に達している計算です。「(米国の)S&P500種株価指数が最高値を記録した」などと株式相場に関するつぶやくことも多く、最近は市場が振り回されるケースが少なくありません。
来年の大統領選を見据えた動き?
今回のつぶやきをめぐっては、市場関係者の間に「(米国の金融政策の舵取りを担う)連邦準備制度理事会(FRB)に対する追加利下げの催促」との受け止め方があります。FRBは前日の7月31日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で10年半ぶりの利下げを決めました。
しかし、FRBのジェローム・パウエル議長は同日の記者会見で、「長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と発言。金融市場には「追加利下げに否定的」との見方が広がり、米国株は失望売りに押されました。
来年の大統領選を控えて株価の動向が気になるトランプ大統領としては、米中通商戦争の激化に対する懸念をあえて再燃させることで、FRBにさらなる「利下げ」というカードを切らせようと考えたのではないか、というのが一部の市場関係者の見立てです。
実際にマーケットでは、9月に開かれる次回のFOMC会合での追加利下げ観測が急速に台頭しています。市場参加者の金利見通しを敏感に反映するフェデラルファンド(FF)金利先物の価格を基にはじき出した金融政策変更の確率を示す数値は、6日時点でマーケットが9月の再利下げを100%織り込んでいることを示しています。
<写真:ロイター/アフロ>