はじめに

「フェドウォッチ」は何を示しているか

この金融政策の先行きに対する市場の読みを数値化したのは「FedWatch(フェドウォッチ)」と呼ばれるものです。「Fed(フェド)」とは「Federal Reserve System(連邦準備制度)」の「Federal」の略ですが通常、市場関係者が「フェド」と口にする場合にはFRBのことを指しています。

「フェドウォッチ」は世界有数のデリバティブ取引所運営会社である米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが算出しています。他の経済メディアでも最近、マーケットが利下げを●パーセント織り込んだ」という記事が増えていますが、その多くは「フェドウォッチ」に基づいたものとみられます。

金融政策変更の織り込み度合いの変化は「フェドウォッチ」のサイトで確認が可能です。同サイトからデータを基に、9月のFOMC会合での変更の確率の推移を示したのが、下のグラフになります。

フェドウォッチ

このグラフを見ると、パウエル議長が会見を行った7月31日の段階では、9月会合でFF金利の誘導目標のレンジを現行の2~2.25%に据え置くと見ている人がほぼ半数を占めていたのがわかります。

ところが、トランプ大統領がツイートした翌8月1日になると、据え置きの確率は15%へ急低下しました。代わって誘導目標のレンジを1.75~2%へ見直すという確率が上昇。0.25%の利下げの織り込み度合いが一気に85%まで高まりました。

年内のFOMCは10月と12月にも開催されます。「フェドウォッチ」のサイトでは、両時点での金融政策変更の確率もチェックすることができます。

「トランプ・ツイート」の真の恐ろしさ

米国の景気は底堅く推移。雇用も依然として堅調ですが、企業業績には足踏み感が出ています。

1~3月期、4~6月期、7~9月期と3四半期連続で減益の見込み。いきおい、株式相場は金融政策頼みの色合いが一段と濃くなりそうです。トランプ大統領もそうした状況をよく理解しているからこそ、FRBへの口出しを続けているのかもしれません。

ただ、景気の足取りがしっかりしているときに利下げというカードを使い果たしたら、本当に景気が落ち込んだ時にテコ入れ策が限られてしまうおそれもあります。パウエル議長の苦悩は当面、続きそうです。

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