はじめに
高校募集をする中高一貫の女子校は少ないという現実
<モリの目>(森上展安)
タカの目さんの今回のトピックは注目の高校募集取り止めの中高一貫校のニュースです。世の親にとって受験は高校でするものという常識をお持ちの方と、いやいや中学でするものという考えの方と、大都市圏では二分されますが、もちろん学齢が若いとどっちにするかと悩む方もいらっしゃるわけで、この判断に影響を与えている者はかねて本欄で指摘しているように1に年収、2に住所地、3に両親の学校歴ということになります。
とはいえ、そもそも男子の話であって女子となると高校募集をする女子校(中高一貫校)自体が少ない。もっというと中学募集もしない聖心女子や田園調布雙葉のようなところもあって…という話になります。
最大の話題はもちろん豊島岡女子の高校募集が2022年から(というと今の中一生です)中止になるというトピック。そうなると現小6生やそれ以下の学年の人で豊島岡女子志望の人はもはや中学受験から入るしかない!というわけで、我田引水ですがモリの企画として10月12日に豊島岡女子にお邪魔して豊島岡女子の入試と入学後の教育について無料公開シンポジウムをします(乞うご期待)!
都内唯一の難関進学校「豊島岡」の高校募集停止はインパクト大
なぜ豊島岡女子の高校募集中止がビッグニュースなのかといえば、タカの目さんも書いている通り上位の進学校の女子高校はここが1校しかないことなのです。
もちろん共学校は筑波大附属や学芸大附属が有名ですが、女子校となると慶應女子のように付属はあっても進学校はない。しかも90名もとってくれるので安心して受験できます。そして何といっても高校受験生にとってありがたいのは豊島岡女子の学費が極めて極めてお安いこと!なのです。
高校受験は都立高や県立校受験が主流ですから安心して併願できるというわけです。仮に学芸大と併願するとしてもこちらも国立大付属ですからかかる費用は教材費、PTA代くらいです。
加えて同校の立地が池袋で、周辺県とりわけ埼玉県からの受験生の集積地(?)ですが、この埼玉も以前ほどではなくなりましたが県立トップクラスは別学校ですので、女子校への進学ニーズがもともと高いものがあり、その意味でも豊島岡女子の立地の良さと学費の安さはいわば最強の路線でもあったのです。
さてご存知のように現状の豊島岡女子は中学受験の最難関の一角を占めていますし、難関大実績においても最上位ですから、高校募集にとって最強の立地と学費は今の同校にとっては必ずしも必要不可欠ということではないのが現実です。
医学部に進学する割合も高いのをみると分かるように豊島岡女子がカテゴライズされる女子中高一貫校最上位に位置する学校群の保護者は総じてアッパーミドルです。高校受験は公立校受験が主ですが、その中核をなす中位所得層とは対象層が違っているのが現状です。学校の事情からいっても中高一貫一本で指導できる方がムダムラムリがないのは実際です。
豊島岡は学費がお得な学校から普通の学校になる?
さて、ここからはモリの目の勝手な分析ですが、豊島岡女子は90名の高校募集分を中学募集に回さないとしています。90名といえば大きな人数ですから(学校によってはそのまま一学年分のところもあります)これをあえてとらないとする判断は完全中高一貫に注力する姿勢として中学受験生から好感されるでしょう。
ただ経営的にそれでは厳しくなるはずですから、私見ですが「お安い」授業料は今後相応の価格に変わるはずだと思います。簡単にいえばごく普通の授業料になるのではないでしょうか。
これから少子化に向かい中学受験人口も次第に減少していくことは間違いないことですから間口は広げず高品質にしてそれに見合った授業料にするという姿勢は中学受験の保護者には受け入れることができる方向だと思います。
総じて中高一貫校の私立の授業料は高校だけの私立より高めで就学支援金の上限を上回っているところが多くあります。豊島岡女子が仮に小生の予想通り授業料を上げたとすると同じように支援金の上限を超えるでしょうから、この傾向は世の親に更に鮮明に意識されるだろうと思います。
それでも日本の私立学校の場合、私学助成金制度のお陰でインターナショナルスクールのように年間200万円以上かかるような事態は避けられています。昭和63年の15才人口減少期に多くの私立は併願中学を復活乃至新設しました。
今回の少子化への私学(公立一貫校も)の対応は高校募集の停止、完全中高一貫化が目にみえた変化かなという気がしています。
開成(と渋幕)は高校から入る生徒について独自に年収の低い世帯の入学生対象に卒業生による寄付金などを基に親の授業料負担がなくても入学進学できるように何年か前から奨学金支給を制度化しています。そのような試みも他方にはあることをお伝えしておきたいと思います。