はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。

医療保険は、「終身型」がいいのか、「更新型」がいいのか悩んでいます。
保険会社の営業さんからは、医療は変化していくので10年後にはその時の医療に合わない保険になっている可能性があるため「更新型」にした方がいいと言われています。ただ、更新後に保険料がぐんと上がってしまうと家計に重くのしかかってしまうのではという懸念があり、私も妻も「終身型」がいいと思っています。ぜひ、プロのご意見をお聞かせください。
(30代後半 既婚・子供2人 男性)


深野: 医療保険について悩まれているようですが、そもそも医療保険は必要なのかどうかからお話しましょう。

風邪などの日常的な病気、歯の治療、捻挫などの怪我に際しては、窓口で3割負担があるものの健康保険でカバーすることができます。仮に入院などになってまとまった医療費がかかったとしても、保険内診療であれば高額療養費制度を利用することで、一定額の負担で医療費を賄うことができます。

余程のことがない限り、医療保険が活用される場面は少ないと考えるべきです。もちろん、大病をしたときに自由診療を希望する、大病でなくても個室を希望するなどの保険外診療を考えているなら別になりますが……。

つまり、病気や怪我などを患った場合、本人がどのような医療行為を求めるかによって、もしもに備えるかたちは変わってくるのです。医療保険の加入について考える場合、まず医療行為についてはっきりさせる必要があるでしょう。

さらに、入院した場合の医療費は貯蓄などの金融資産を取り崩して支払うのか、あるいは医療保険で補うのかについても考えなければなりません。

貯蓄であれば、医療費として使わなければ、ほかの目的のために使うことができますが、医療保険になると病気にならない限り現金化はできませんし、ほかの目的に使うこともできません。

金融資産が少ない場合は?

ただし、医療費に回してもよい預金などの金融資産が少ない場合は、医療保険に加入するべきでしょう。病気や怪我は金融資産が貯まるまで待ってはくれないからです。また、医療費をなにで賄うのかとともに、医療保険がいつ必要なのかも考える必要があります。

医療費を賄うほど金融資産がないのであれば、もしもの備えとして医療保険にすぐに入る必要がありますが、通常、大病などで病院のお世話になるケースが増えるのは歳を重ねてからのはずです。

とすれば、若いうちは医療保険に加入する必要はなく、年を重ねてから医療保険に加入しても遅くはないでしょう。

歳を重ねてから保険に入ると保険料が高くなる、と言われますが、仮に若い時に加入した医療保険の保険料が2,000円、20年後に加入した場合の保険料が倍の4,000円であった場合、前者を30年間とすると保険料総額は72万円、後者は10年間しか加入していないので48万円で済むのです。40年では96万円で同額に、41年以降でやっと保険料の負担が逆転するのです。

あくまでも1つの考え方として保険料負担はイメージしてください。

更新型か、終身型か

質問者の方は、更新型か終身型かで悩まれていますが、終身型の方が月々の保険料は少なく、更新型は更新の度に保険料が上がるイメージがあります。しかしこれは、ともに同じ期間保険料を支払うという観点での比較と思われます。先に述べたように、医療保険といえども必要な時期に必要な保障を確保するというのが本来の保険の使い方です。

必要でなければ、慌てて保険に加入する必要はないでしょう。

余談ですが、私は10年更新型の医療保険に加入して、10年経過したところで止めてしまいました。医療費を賄える貯蓄が確保できたからです。

すでに止めてから10年近くが経ちますが、確保している貯蓄にはいまだ手をつけていません。医療保険に加入していなくても、なんら不自由は感じておりません。医療費のための貯蓄といっても、10年あれば誰でも貯めることができる金額ですのでご安心を。

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