はじめに
8月の金融市場を突如襲った日米同時株安。円高進行や日米の長期金利低下もあり、いわゆる「リスクオフ」傾向がみられました。本稿執筆時点(8月21日)時点では下げ止まったようにも見えますが、まだ予断を許さない気がします。
このように相場全体の方向感が読めない時、投資家は何を基準に投資する銘柄を判断すべきなのでしょうか。半年前にあたる2月22日の本連載では、TOPIXグロース指数と同バリュー指数を比較しました。今回は再びこの2つの指数を比較して、株価傾向に変化がないかを確認してみたいと思います。
セクター別騰落率では内需系優位
7月末から8月21日終値までの業種別(東証株価指数33業種)の騰落率を見てみると、ランキング上位には内需系の業種が並んでいます。内需系は、輸出関連産業に比べれば円高の影響が小さく、今回の円高を伴う株価下落局面ではやはり下がりにくかったようです。
一方、下落率の上位には、鉄鋼・非鉄金属、石油、紙・パルプなど、資源・素材系が並んでいます。資源・素材系は原材料輸入価格が採算に影響するため、為替だけでなく、原油や鉄鉱石などの資源相場の影響も大きく受ける銘柄群です。
電気機器や自動車などの輸出関連業種の下落率は、ランキングの真ん中辺りに多く見られます。円高の影響は感じられるものの、為替変動が最大の株価下落要因というわけでもなさそうです。
4~6月期決算と円高で明暗
7月下旬から8月半ばには、4~6月期決算の発表もありました。前年に引き続き、過去最高益を達成した企業も少なからず見られましたが、2ケタ減益となる企業のほうが多く見られました。4~6月期はまだ最初の3ヵ月であるにも関わらず、早くも年間利益予想を下方修正した企業が60社以上ありました。
業種別では、製造業を中心に電気機器、自動車、化学、石油、鉄鋼・非鉄などの純利益減益率が大きかったようです。騰落率ランキング下位の業種はほとんどが大幅減益業種と重なります。ただし製造業の中でも、精密機器はさほど減益にならず、通期予想は増益予想のままでしたが、8月の株価推移はわずかながらプラスでした。
非製造業を見ると、増益だった業種も多く、4~6月期の純利益は減益ながらも、通期では増益予想をキープしている業種が多く見られます。非製造業は言い換えると内需系が多く、今回の株価騰落率ランキングの上位と重なっています。
こうして考えると、今回の下落局面では、円高や金利低下などの影響よりも、4~6月期決算内容の影響のほうが大きかったといえそうです。