はじめに
しかしディフェンシブ傾向は見られず
TOPIXグロース指数とTOPIXバリュー指数は、PBR(株価純資産倍率)の高い銘柄群と低い銘柄群をそれぞれ指数化したものです。一般にPBRとROE(自己資本利益率)には一定の相関があり、高PBR=高ROEの傾向となります。したがって、グロース指数はROEが高い企業群の動きを示しています。
株価上昇局面ではグロース指数がバリュー指数を上回る傾向があり、反対に株価下落局面ではバリュー指数のほうが下がりにくい傾向にあります。上昇局面では利益率の高い銘柄群に人気が集まる傾向にある一方で、下落局面になると低PBRで割安感の高い銘柄群や配当利回りの高い銘柄など、いわゆるディフェンシブ銘柄が下がりにくくなるのです。
ところが2018年は、グロース指数の下落幅がバリュー指数よりも小さくなっています。この年の日経平均株価は年間で2ケタの下落でしたが、ディフェンシブ傾向はなかったということになります。
前回(2月22日)、2019年も同じ傾向が続きそうだと書きました。表2を見ると、グロース指数+5.42%、バリュー指数-4.96%と、正反対の動きになっています。今年の月別の変化幅を見ても、6月がほぼ同じとなった以外は、どの月もグロース指数優位となっています。
そして気になる8月の動きを見てみると、グロース指数-3.15%、バリュー指数-5.59%と、バリュー指数のほうが大きな下落幅となっています。今回もディフェンシブ傾向が見られなかったということになります。
有望なのは引き続きグロース系か
今回の株価推移や4~6月期決算内容を見る限り、内需系業種のほうが決算内容も良く、株価下落率も小さくなっています。ですが、バリュー指数の下落が大きいことを考えれば、内需系企業の中でもPBRとROEの低い銘柄群は相対的に売られている可能性があることになります。
一方で、輸出関連企業の多い製造業は減益幅が大きく、株価推移も芳しくない傾向にあります。とはいえ、グロース指数の優位が続いていることを考えれば、ここでもPBRとROEの高い銘柄群は株価面でも健闘している可能性がありそうです。
実は、円高や米中貿易摩擦の影響を大きく受けている半導体などの業種でも、すべてが同じ傾向というわけではありません。当然ながら、大幅減益かつ株価低迷という企業も多く見られます。
しかし、アドバンテスト(証券コード:6857)のように、決算内容も良く株価が上昇している企業もありますし、東京エレクトロン(8035)のように、大幅減益ながらも株価は上昇という例もあります。どちらも高ROE、高PBR銘柄です。
ここまでの話をまとめると、「円高への抵抗力」「米中貿易摩擦の影響」「製造業と非製造業」「内需ディフェンシブ」という観点で選ぶよりも、「高ROE/高PBR」の中から選ぶほうが、運用成績が期待できるのではないでしょうか。
今回の4~6月期決算の筆者の印象
ちなみに筆者の個人的印象ですが、今回の4~6月期決算では中国景気減速の影響がさらに深まった印象があります。ただし、半導体・スマートフォン関連、ロボット・IoT関連、あるいは中国関連などは、昨年から業績減速が確認されている業界です。
今回は自動車産業の減速のほうが、新たな動きとして感じられます。車載電子部品も増えているので、自動車関連と言う場合の影響が及ぶ業種も増えていることに注意が必要だと思います。一方で、ITシステム業界の安定成長が感じられたことに加えて、5G関連機器の受注がいよいよ始まったなという印象があります。
<文:ストラテジスト 田村晋一>