はじめに
あおり運転のニュースが絶えることがありません。友達、家族とのドライブも、あおり運転ひとつで楽しい時間が一変してしまいます。
危険ドライバーによる許しがたき犯罪行為から自らを、家族や友人、恋人との大切な時間を守るための回避策をお届けします。
記録手段によって表面化
ニュースを聞かない日がないほど、あおり運転は社会問題化しています。これは必ずしも近年、あおり運転が急増しているというわけではないでしょう。この手の交通トラブルは以前から多くあったのですが、ここに来てドライブレコーダー(以下、ドラレコ)やSNS用のカメラなどの普及によって記録としてトラブルが残せるようになったことで表面化しているのだと考えられます。
私自身、5年ほど前に女性やお年寄りなど“交通弱者”に対してドライブレコーダーの装着を勧める企画を行ったことがあります。ところが反応は今ひとつでしたし、あおり運転に対しての認識も決して高いものではありませんでした。
そうした状況が一変したのは2年前の6月、東名高速道路の追い越し車線上に車を停車させられた夫婦が死亡すると言う悲惨な事故が起きたことでした。何ともやりきれないこの事件によって、あおり運転の反社会性と恐怖が知れわたり、無法者の所業を“記録する”ことの重要性が見直されてドラレコの普及にひと役買ったと思います。同時にドラレコの装着は、こうした行為の一定の抑止力にもなっています。
「あおりの口実」を作らない
しかし、ドラレコ装着はあくまでも“ことが起きたときの過失の証明”です。重要なのは、ことが起きないようにするにはどうしたらいいか、なのです。今ニュースを賑わせている常磐自動車道で起きた宮崎容疑者による事件ですが、あまり話題になっていないことがあります。それは“被害者はなぜあおられたか?”という部分です。
被害者は「追い越し斜線を走行中、後ろから迫ってきた容疑者のクルマに気付きながらも左横の走行車線にクルマがいて車線を譲れなかった」というような証言をしています。これがあおり男に“きっかけ”を与えてしまったのです。
まず被害者は追い越し車線を追い越しもせずに走っていたとすれば、道路交通法違反にあたります。こうしたクルマは本当に多く見かけます。さらにそうしたクルマに限り後方確認を常に行うことなくダラダラと走り続けていることが多いのです。当然、後方から迫ったクルマにとっては邪魔な存在でしかありませんから、キレる原因を作っていたわけです。
道交法では追い越しが終了したら安全速度と車間距離を確認しながら速やかに走行車線に戻らなければいけません。もし制限速度内で追い越しが出来ないのであれば、すぐに追い越し行為を止め、走行車線に戻るべきだったわけです。今回の宮崎容疑者を見ても分かりますが、危険運転を平気で行うドライバーは“話しても分からない相手”ですから、もっとも重要なことは、きっかけを作らない、相手にしない、早く無法者から離れることで、まずは事件を起こさないようにしていただきたいです。
あおられないための9か条
1、高速道路では追い越し車線を走り続けない(道交法違反です)。
2、5秒に1回ほどルームミラーで常に後方の状況も確認する。
3、後方から迫られたら相手を先に行かせる。この時、相手の車のドライバーを見ない。これだけでも「目が合った」「ガンを付けた」と幅寄せされる例もあります。
4、相手に危険な割り込みをしたと思われないように無用な車線変更を繰り返さない。
5、追い越し車線以外から追い越しはしない(これも道交法違反です)。
6、一般道で執拗にあおられたら、停車してクルマをやり過ごす。
7、先行するクルマに対してこちらがあおっていると勘違いされないために車間距離を「2秒弱」取ること。例えば前のクルマが道路標識や道路の繋ぎ目を過ぎたら「0、1、2」とカウントし、2秒弱で自分がそこを通過するという感じです。これはあらゆる速度域で共通の数え方です。
8、「あおってくる相手が悪い。私は道交法を守っているから正しい」と意地を張らずに、とにかく危険な相手から少しでも早く離れること。
9、クラクションやパッシングは危険が予知される場合に使用する。決して「危ないだろ!」といった警告での意味合いでは使用しないこと。これがきっかけになることが多い。
以上のように“原則論や常識が通じない相手”とは張り合わないこと、相手にしないことが一番なのです。