はじめに

「がんは早期発見・早期治療が大事。早く発見すればするほど、治る確率も高くなる」と、わかってはいても、なかなか受ける気になれないのが、がん検査ではないでしょうか。

バリウムを飲むのは苦しくてイヤだし、胃カメラはもっとイヤ。大腸内視鏡なんて、時間もかかるし苦しいし恥ずかしいし。それに、頑張って受けたところで、わかるのは胃カメラなら胃がん、大腸内視鏡なら大腸がんだけで、ほかはわからない。忙しくて時間もないし、自覚症状もないのに、これでは検査を受ける気になれませんよね。

ところが、こんな“がん検査の常識”をひっくり返す、まったく新しいがん検査が、2020年に実用化されます。苦痛もなく、手間も時間もかからず、ほぼ全身のがんのリスクが、早期に高い精度でわかる。しかも低価格。いったいどんな検査なのでしょうか?


尿1滴で15種のがんのリスクを判定

その検査とは、(株)HIROTSUバイオサイエンスが開発した線虫がん検査「N-NOSE(エヌ・ノーズ)」。体長たった1ミリの生物・線虫が、尿に含まれる微(かす)かながんの匂いを嗅ぎ当てます。線虫は、匂い物質を受け取る「嗅覚受容体」が約1,200種類と犬の1.5倍もあり、嗅覚が非常に鋭敏なのです。

検査に必要なものは、尿1滴です。職場や自治体の健康診断には尿検査が必ずありますから、ついでにN-NOSEが実施されれば、余分な手間や時間はいっさいかかりません。
事前の食事制限などもなく、バリウムや下剤のようなマズイものを飲む必要もありません。もちろん、恥ずかしい思いもしないで済みます。医療被曝の心配もありませんから、妊娠中の人や幼児でも安心です。

わかるのは、ほぼ全身のがんのリスクです。大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、子宮がん、膵臓がん、肝臓がん、前立腺がん、食道がん等々、15種のがんのどれかがあると、高リスク判定が出ます。15種以外の希少ながん種は、サンプル収集に時間がかかるため、現段階では十分な数の解析ができておらず、検知できるかどうか不明。ただし、今後サンプル数が増えれば、希少がんについても検知できるかどうか明らかになるとのことです。

がんのリスクを判定する精度は、約9割です。
詳しくいうと、何らかのがんがある人を「がんがある」と判定する確率は、ステージ3〜4で87.8%、ステージ0〜1の早期がんでも87.0%です。

安価で、精度も高い

これだけでは、ピンとこないかもしれませんね。この確率がいかに高いかは、がん検査にしばしば用いられる腫瘍マーカーと比べると、よくわかります。
腫瘍マーカーは何種類もありますが、代表的な腫瘍マーカーの1つCEA(大腸がん、胃がん、肺がんなどを診る)では、ステージ3〜4で38.3%、ステージ0〜1の早期がんでは13.8%という結果が出ています。

やはり代表的な腫瘍マーカーCA19-9(膵臓がん、胆道がん、胃がんなどを診る)は、ステージ3〜4で52.5%、ステージ0〜1の早期がんでは13.8%。
早期がんの人が100人いた場合、87人を見つけられる検査と、14人しか見つけられない検査とでは、大違いではないでしょうか。

気になる費用は、8,000〜9,000円の予定とのこと。腫瘍マーカーは1種類あたり数千円程度ですが、3種類ほど組み合わせて実施するのが一般的ですし、精度の低さが問題です。そのほかの検査、たとえば胃や大腸の内視鏡検査は1万5,000円程度。全身のがんのリスクを診られる数少ない検査の1つであるため、人間ドックのメニューにもしばしば採用されているPET-CT(陽電子放出断層撮影)は、それだけで10万円ほどかかります。全身を診られて1万円以下というのは、画期的といってもいい安さでしょう。

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