はじめに
有望外食企業は何が違うのか
現在、日本の大手外食チェーンの中では「マクドナルド」「ケンタッキー」「すかいらーく」「吉野家」の売上高が堅調に推移しています。この4社の共通点はマーケティングに力を入れ始めていることです。
特に外部からCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、もしくはそれに準じた人材を誘致している会社が多いのが特色です。CMOとは聞きなれない役職ですが、職務内容は経営に関わるとともに、マーケティング戦略を部署の垣根を超えた「横断的なマーケティング」に対して、責任を持つポストといえます。
上記4社に続き、「丸亀製麺」を展開しているトリドールホールディングス(HD)も、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを革新的なアイデアで集客増につなげた森岡毅氏と組み、新しいマーケティングに取り込んでおり、効果が出始めています。
また、外食は新商品の紹介やキャンペーンの紹介などテレビコマーシャルや店の外観のポスターなどで告知するケースが多いです。場合によっては、新聞チラシに無料券、値引き券などを配布していました。
ツイッターに表れる各社の勢い
しかし近年は、若い層を中心に新聞を定期購読する人が減り、変わってSNSを活用するケースが増えてきました。下表は、各社の公式ツィッターのフォロワー数のランキングです(2019年6月17日現在、前回調査は2018年8月3日)。
1位が「マクドナルド」、2位が「ケンタッキー・フライド・チキン」、3位に「モスバーガー」が続きます。これを見ると、ほとんどの会社のフォロワー数が1年以内で前回調査比10%以上増えています。
伸び率でいうと、「丸亀製麺」「ほっともっと」「くら寿司」「やよい軒」「松屋」「幸楽苑」「カッパ寿司」は前回調査比2倍以上のフォロワー数となっています。ツイッターを活用している年齢層は若い人が多く、顧客層の若返り、女性客の増加などが効果として出てきた、とコメントする会社が増えてきました。
外食企業は一般的に競争激化、人手不足で苦しんでいる会社が多いとみられています。しかし、マーケティングなどを工夫することで、売上高の拡大→利益増に加えて、イメージの向上などによる人手の確保が容易となる可能性もあります。人手不足の中で、上記4社の人手不足感は他の外食チェーンに比べて逼迫感はなさそうというのが、取材をしていて感じるところです。
“企業分析のプロ”が注目する銘柄は?
また、マーケティングに成功した会社は長期間、既存店売上高が安定する傾向にあるのが特色です。消費低迷していると言われている中で、2019年4~6月の営業利益は日本マクドナルドHDで前年同期比40.8%増。すかいらーくHDで同17.6%増、吉野家HDは10.44億円(3~5月の実績、前年同期は1.78億円の営業損失)、日本KFCHDは9.51億円(前年同期は5.15億円の営業損失)と、順調な業績展開となっています。
上記4社に「吉野家」が入っていることに注目しています。同社は「うまい、やすい、はやい」を企業文化としてきました。2000年代初めまで、牛丼業界では吉野家はガリバー的な存在でした。
1990年代では「松屋」「すき家」の店舗数を足しても、吉野家には遠く及びませんでした。しかし現在では、店舗数では国内「すき家」の1,931店舗に対して国内吉野家は1,215店舗(19年7月末現在)と差がついてしまいました。
吉野家としては、客数を増やすためにマーケティングに力を入れ始めたことは注目です。今年に入り、「牛丼 超特盛」「ライザップ牛サラダ」「モンスト盛」(豚丼)「特選すきやき重」など、ユニークなネーミングの商品を投入し、話題となっています。
<文:企業調査部 鮫島誠一郎>