はじめに

人生100年時代には、長期化する老後をカバーする計画的な資産形成(資産寿命の延伸)とともに、将来への備えとして心身の健康を自律的・持続的に維持・管理していくことが重要になります。

近年では結婚しないライフコースを歩む人の増加等も背景に単身生活を送る中高年世代(以下、中高年シングル)が増えています。

1人暮らしは生活の自由度が高いため、健康の維持・管理を効率的に行える反面、自己管理が求められるライフスタイルです。また、個人差もありますが、体調を崩したり、大きなストレスを感じるような出来事に直面した場合には、頼りにしたり、様子を見守ってくれる家族がいないことを不安に感じやすいライフスタイルといえるかもしれません。

今回は、雇用者として働く中高年シングルが自分の「健康を気づかってくれる」と感じている人について答えた調査結果をご紹介したいと思います。


健康を気づかってくれる人は「母親」が最多

筆者が所属する第一生命経済研究所では、企業等で働く40~50代の男女計2,000名を対象に、健康を気づかってくれる人についてたずねるアンケート調査を行いました。

その結果、女性や正規雇用の男性では健康を気づかってくれる人として「母親」をあげた人が最も多く、「父親」や「兄弟姉妹」など他の親族の割合を大きく上回りました(図1)。

中高年期以降のライフイベントでは母親の死より父親の死を先に経験する人が多いこととも関連しますが、別居する母親は中高年シングルにとって自分の健康を気づかってくれる存在として重要な位置を占めていることがうかがえます。

男性では4割前後が「誰もいない」と回答

一方、親族以外の人についての回答結果をみると、女性では就労形態にかかわらず「友人」をあげた人が4割弱と「母親」に次ぐ位置を占めています。

これに対して男性では、女性に比べ親族以外の人をあげる割合が全般に低くなっています。「誰もいない」と答えた人の割合は女性より男性で高く、「友人」をあげた人の割合も、女性に比べかなり低くなっています。

図1

注:(株)第一生命経済研究所「中高年単身者の生活実態に関するアンケート調査」。調査対象者は、雇用者として働く40~59歳の配偶者のいない単身者2,000名。対象者は調査会社の登録モニターから一都三県の正規雇用者と非正規雇用者各1,000名を性・年齢階級別に均等になるよう抽出。調査時期は2018年10月。

「健康を気づかってくれる」人の存在は、健康づくりの実践状況と関連

このような「健康を気づかってくれる」人の認知状況は、中高年シングルの自身の将来に向けた備えとしての健康づくりの実践状況との関連がみられました(図2)。

「健康を気づかってくれる」人が「いる」と感じている人の方が、またそのような人が親族だけでなく親族以外にもいる人の方が、「誰もいない」と感じている人に比べ将来に向けた健康づくりを行っている割合が高い傾向がみられたのです。

図2

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