はじめに
法的なトラブルに巻き込まれた時、「どこに相談したらいいのか……」と困った経験がある方もいるのではないでしょうか。そんな際に役立つかもしれない、弁護士を紹介してくれて、法律相談料や弁護士費用もカバーできる「弁護士保険」が、少しずつ広がっています。
8月には、フリーランス事業者を対象にした保険に、損保ジャパン日本興亜が参入すると発表。自宅に弁護士保険のステッカーを掲げる人もいるそうです。いったい、どんな保険なのでしょうか。
円満解決に役に立つ?
東京都内の40歳代の男性は今年、弁護士保険を使い、賃貸住宅を退去する際の大家とのトラブルを円満に解決できたといいます。15年間ほど住んでいた部屋を退去する際、大家さんから「原状復旧に100万円ほどかかる。敷金だけでは賄えないので追加で払ってほしい」と言われたそうです。
確かに、入居中に洗濯機のホースが外れて床板の一部が腐食するなど、心当たりはありました。しかし、提示された金額はあまりに高額。保険を使って弁護士に相談すると、大家と自分の負担分を整理してくれ、原状復旧の方法へのアドバイスをもらいました。弁護士の見解を元に復旧方法などを交渉し、5,6万円の費用負担で済むことになったそうです。
「どう交渉すればいいかわからず、感情的になりがちだったが、弁護士に相談したことで論理的に話ができた。納得感も大きかった。弁護士保険は争うための武器というより、円満解決のためのツールと感じました」と、この男性は話します。
弁護士が増えてもハードルは高いまま
2018年の弁護士登録者数は4万人を超え、ここ20年で倍増しています。近隣トラブル、離婚や相続などの家族問題、会社でのパワハラやセクハラなど、法的なトラブルは増えたようにみえても、弁護士が身近な存在になったとはいえません。
少し古い調査ですが、2011年に内閣府が行った法律支援に関する世論調査によると、「10年前に比べて法的トラブルが増えていると感じますか?」という問いに、「増えた」と答えた人は87.6%。「法的トラブルにあったときに相談できる弁護士がいない」と答えた人は80.4%に上りました。
また、弁護士への相談を迷う、または相談しないという理由に、62.8%の人が「費用が高そうだから」と回答。知り合いの弁護士がいないこと、費用が高額であることが、法律の専門家へのアクセスを妨げていることがわかります。
実際に、弁護士費用は安くはありません。仕事を依頼する前の「法律相談」で、相場は1時間5000~1万円ほど。離婚調停や交通事故の裁判では着手金だけで数十万円、さらに結果に応じた報奨金や実費がかかり、弁護士費用は総額で100万円を超えることも珍しくありません。
無料で法律相談ができる「法テラス」などもありますが、利用には経済状況などによる制限があります。