はじめに

日経平均株価ベースで見た1株当たり利益は、今年1月4日時点で1,764円でしたが、8月30日時点でも1,764円と変わっていません。米中貿易戦争の影響が業績に影を落とし始めている企業はあるものの、全体で見てみると、現時点での影響は限定的なものとなっているようです。

このように株価が上にも下にも動きにくい状況で注目されるのが、配当利回りに着目した株式投資です。金利が一段と低下し、債券で魅力的な投資先を見つけることが難しくなる中でも、前述のように、配当金の元となる日本企業の利益はあまり落ち込んでいません。

一方で、9月は3月末決算企業の中間期末に当たるため、配当落ちする銘柄が多くあります。配当狙いで購入するには今月が格好のチャンスであり、次の機会は半年後を待たないといけません。9月末に配当を得られる高配当銘柄には、どのようなものがあるのでしょうか。


ランキングに見る“2つの特徴”

下の表は、9月末に配当落ちがある銘柄のうち、時価総額が3,000億円以上で予想1株当たり配当が予想1株当たり利益を下回っていない銘柄のうち、年間の予想利回りが高いものからランキングしたものです。

高配当銘柄

ランキングを見ると、いくつかの特徴があります。

1つは、住友商事や双日、丸紅といった商社株です。商社株は資源価格の影響を受けやすいことから、世界経済の変動影響を受けやすい業種といえます。そのため、投資先の収益悪化などが発生すれば減配になるリスクがありますが、銘柄を分散することで、そのようなリスクを軽減することができます。

2つ目は、三井住友フィナンシャルグループやゆうちょ銀行などの金融株です。金融株は世界的な金利低下により収益環境が厳しさを増していますが、株価は先行して下落しており、PBR(株価純資産倍率)は0.4倍程度と割安な水準です。5%程度の配当利回りを考えると、配当を受け取りつつ長期保有して株価が見直されるまで保有し続ける、といった投資戦略も考えられます。

日産自動車が1位だけれど…

その他では、お家騒動で株価が大きく下落している日産自動車などもランクインしています。仏ルノーとのアライアンスのあり方などで配当方針が見直される可能性などもあるため、注意したほうが良いでしょう。

米中貿易戦争の影響により株式市場では景気減速が警戒されていますが、世界の中央銀行はこれを予防するため、相次いで金融緩和策を打ち出すことが予想されています。利下げや量的緩和の再開などが実施されれば、株価を下支えする効果が期待できそうです。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎>

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