はじめに

スーツ離れを食い止めようと、大手紳士服メーカーのAOKIがオーダーメードスーツ専門の新業態店「Aoki Tokyo」を立ち上げたのが今年3月。オープンから半年の売り上げは当初計画を上回り、9月20日には新宿に3店舗目を出店します。

競合ひしめくオーダースーツ業界で、後発のAOKIが順調に客足を伸ばしている背景には何があるのでしょうか。東京・銀座の「Aoki Tokyo銀座6丁目店」でオーダースーツ作りの体験会を取材すると、ある特徴が浮かび上がってきました。


ジム通いの有無までチェック

ショーウインドーにはこだわりのスーツが並ぶ、Aoki Tokyo銀座6丁目店。デザイナーのアトリエをイメージしたという店内は、天井が高く、開放的な雰囲気です。

Aoki Tokyoは銀座、池袋の都心に店を構え、郊外にあるAOKIと違いを出します。ターゲットも20~40代に絞り込んでいます。

今回、スーツを作るのは30代の男性。入店すると、まずカウンセリングからスタートします。

カウンセリング
時間をかけたカウンセリングで、顧客の好みを把握する

「どのようなスポーツやトレーニングをしているか」「季節ごとの体重の増減はどのぐらいか」など10項目の質問に答えます。スーツを作るのにスポーツの種類まで聞くとは意外な感じもしますが、これには理由があります。

「マラソンをする人と、ジムでトレーニングをしている人では、同じ体重でも、筋肉の付き方がまったく違います」(熊谷真利・商品戦略企画室Aoki Tokyoブランドマネージャー)。スーツを作る人が、普段どのようなライフスタイルなのかを聞き、スーツ作りの参考にするのです。

ちなみに、店内の中央に置かれた、スタッフと来店客が向き合うテーブル幅は85センチメートル。来店した人の緊張がほぐれるように、近すぎず、遠すぎず、ちょうどよい距離感にこだわりました。

ポリエステルとウールの違いは?

カウンセリングの次は、スーツのタイプと生地を選びます。今回、男性が希望したのは、冠婚葬祭で使えるスーツです。

チーフフィッターの鈴木義仁さんが350種類以上の生地の中から選んだのは、黒や濃紺の4種類。生地は、スタンダードなポリエステルからウールとの混紡生地、ウール100%のイタリアのインポート生地まで複数のバリエーションがあります。

生地
秋冬は温かみのある起毛した生地も人気がある

鈴木さんは「値段が高い生地が、品質が良いというわけではありません」と説明します。

たとえば、ウールに比べて低価格のポリエステルの生地は、ウォッシャブルや吸汗速乾など、扱いやすいというメリットがあります。近年は技術が進化し「ウールライクなポリエステル」という表現があるぐらい、肌触りの良い素材が出ています。

一方、天然素材のウールは風合いの美しさや、シワの回復力に優れています。また、ウールの中でも、羊の毛が細いほうが高品質とされています。自分の生活スタイルや、こだわりに合った生地を選ぶのが良さそうです。

今回はフォーマル用ということで、カラーは黒を選択。生地はウール50%、ポリエステル50%の混紡タイプを選びました。スーツのスタイルは複数のタイプを試着し、長く着ることができるように、流行に左右されないベーシックなシルエットに決めました。

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