はじめに

実際の話しを聞いてみると…

今回、複数の若い層の方々にインタビューをすることができました。ある社会人女性(20代後半、製造業)は、ペアーズでのべ1500人の男性からアプローチを受けたそうです。今は、ペアーズで知り合った2人目のパートナーと、結婚を前提に同居しているとのこと。しかし、今でも時々、パートナー公認のもとで、マッチングアプリにログインし、他の男性からのメッセージ等が複数あることで、自分が「女性としてまだイケてるのか」を確認していると言います。

こうしたアプリを使い始めるにあたっては、特に女性の場合、友人が既に使っているということが大きな影響を与えているようです。上記のように、男女で受け取るメッセージの平均数が大きく違うのも、こうしたインターネットの出会いの特徴です。年齢層は広がってきては居るものの、ペアーズで男性会員が「いいね」を最も多くもらえるのは30歳であるという調査結果 もあることから、婚活ないし婚活前後の恋活が、ペアーズ・コミュニケーションの中心と言えそうです。

同じくインタビューしたある社会人男性(20代前半、医療事務)は、ペアーズで70名ほどの女性にアプローチし、20名ほどと会い、3名とお付き合いしたそうです。合コンや社会人サークルといった集団生活にやや苦手意識をもつ彼にとっては、ペアーズやティンダーは、恋人をみつけるためのたいへん効率的なシステムだと言います。

次に話を聞いたのは、有名大学卒で、大手IT系企業に勤め、週末はDJもする男性(30代)です。彼にとってペアーズは、サブカル関連で趣味の合う女性を検索しやすい仕組みだったそうです。ただし、ペアーズで出会った最初の2人は外見があまり好みではなく、また比較的気に入った3人目の方とは結局交際が成立しなかったとのこと。今は、ネット経由ではなく、クラビング活動で知り合った社会人パートナーと、結婚を前提にお付き合いしているそうです。

インタビューや国内外の文献調査を通じて、マッチングアプリでのコミュニケーションについてのその他の傾向も明らかになってきました。

どうやって相手を選んでいる?

まずはプロフィール写真について。「みんな2〜3割増しの自撮りなどをプロフィールに掲載しているので、実際に会ってみると期待していたほどではなかったこともあった」という声がありました。それだけ、オンラインの出会いにおいて、1枚の写真の持つアピール力は不可欠ということなのでしょう。

どれだけインターネットが文字ベースのコミュニケーションに適しているとしても、こと恋愛という次元になると、見た目の第一印象という、非常に身体的な感覚がモノを言うようです。

また、女性のユーザーからは「相手の男性の年収は、自分と同じぐらいか、少し少なくても構わないが、学歴は自分より上であってほしい」という声が複数ありました。

その他、こうしたマッチングアプリ/サービスについては、どの国でも一般的に、同性愛者のほうが以前から、より多く、より頻繁に利用する傾向があると言われています。

もちろん、使いやすくなったからといって、必ずしもすべてのユーザーが首尾よく理想の出会いを見つけられているわけではありません。こうした「恋愛完全自由市場」な空間においては、潜在的には、一部の少数のモテる男性に、多数の女性の注目が集まる傾向があります。海外の研究では、マッチングアプリが、モテる人ばかりが得をする空間のように思える、という男性ユーザーの声も紹介されています。

(参照:Hobbs, Owen, and Gerber. 2017. "Liquid Love? Dating Apps, Sex, Relationships and the Digital Transformation of Intimacy." Journal of Sociology 53(2): 271-284.)

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