はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。
祖父が亡くなり、相続についてのご相談です。残された資産は、家と宅地で価値500万円程度。祖母はすでに死去し、子供は長男、長女の2人。長男は私の父で、すでに死去。長女は私の伯母で健在。私の母は健在。私の兄弟は、姉、私、弟の3人です。
伯母や私の姉弟と話し合い、私がお墓の管理とセットで祖父の資産すべてを相続することに口頭で決めました。みんな、「相続については放棄してもいい」と言っています。揉めるような仲ではないため、分割協議書でよいと考えています。なにか懸念はありますか?
また姉弟が相続を放棄し、私や私の妻子が海外勤務などで万が一、事故死した場合、母も死去していると誰も相続者がいなくなるのでしょうか? 田舎で本家のため、家が絶えることを気にしています。
(30代後半 既婚・子供2人 男性)
深野: 相続についてのご質問ですね。順番に沿って回答させていただきます。
遺産分割協議書で問題ない
1番目のご質問は相続財産、相続人の数から判断する限り相続税を心配する必要はありません。
すでに口頭で相続、相続した財産の管理についてはご協議が済んでいるようです。ご質問者を除く相続人は「相続については放棄してもよい」と述べているようですので、ご質問にあるように相続放棄の手続きをする必要はないでしょう。
相談した内容に基づいて遺産分割協議書を作成して署名、押印のうえ、相続人それぞれが1通ずつ保持すれば問題はないと思われます。
ただ、揉めるような仲ではないとのことですが、念には念を入れておいた方がよさそうです。法的な効力がどれくらいあるかはわかりませんが、遺産分割協議書に記載しない事柄を覚書などにまとめて作成し、相続人の署名、押印のうえ、相続人それぞれが1通ずつ保持していれば、よりよいと思います。
2番目の質問についてですが、ご質問者ならびにご質問者の妻子が海外勤務などで万が一のことがあった場合、お母様が存命であればお母様が、そうでなければ相続人はご質問者の姉または弟になります。
したがって、ご質問者の家族全員に万が一のことがあったときに備え、田舎の本家を守るのは姉なのか弟なのかを決めておかれるとよいでしょう。そうすれば、本家が絶える心配はなくなります。祖父の相続を機に、早めにご相談されるとよいかと思います。