はじめに

9月9日に公表された8月の景気ウォッチャー調査では、ある指数が注目されていました。景況感の方向性を示す「現状判断DI」です。

最新調査では、消費税増税時期を挟む「先行き判断DI(季節調整値)」は前月差4.6ポイント低下し、39.7に悪化しましたが、注目の現状判断DIは天候の回復などで前月差1.6ポイント上昇し、42.8まで回復しました。

この現状判断DIが注目されていたのは、8月8日に公表された7月調査で41.2と、3ヵ月連続で悪化し、熊本地震が発生した2016年4月以来、3年3ヵ月ぶりの低水準となっていたためです。

季節調整値のある2002年1月以降の211ヵ月中で、低いほうから39位タイ。これより低い数字の多くは2009年までのもので、2010年以降は東日本大震災のあった2011年3月、4月、5月と、消費税率が引き上げられた2014年4月の4回しかありません。街角景気の景況感はかなり微妙なところに来たといえます。


先行きの景況感の足を引っ張る要因

景気ウォッチャー調査は現状の景況判断を「良くなっている」「やや良くなっている」「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」の5段階で回答します。DIを作成する時には0.25刻みでそれぞれ1、0.75、0.5、0.25、0の点数を与え、これらを各回答区分の構成比(%)に乗じてDIを算出します。50が景気判断の分岐点になります。

「地域」と「分野・業種」の2つの軸からバランスよく、日本経済の縮図になるように選ばれた景気ウォッチャーは、5段階の回答に関しての判断理由を明記するので、含まれるキーワードから、どの要因が注目されているかがわかります。なお、比較対象は全体の原数値になります。8月の現状判断DI(原数値・参考)は42.6、先行き判断DIは39.1でした。

8月の景気ウォッチャー調査で最も注目された要因は「消費税・増税」でした。「消費税・増税」関連現状判断DIは45.4と、全体のDI(42.6)よりやや高く、229人が回答しました。足元の駆け込み需要を指摘するコメントも散見されました。

先行き判断では714人と、全回答者1,496人(回答率90.2%)のうち4割近くが「消費税・増税」を挙げ、関連DIは30.7と低水準になりました。6月の450人、7月の578人より増加し、DIは48.2、39.1に引き続き30.7まで大きく低下してしまいました。

6月では2~3ヵ月先の先行き判断で駆け込み需要に期待する向きも多かったですが、7月、8月と月を追うごとに10月以降のマイナス面が意識されているようです。

「2000万円」もマイナスに寄与

6月に公表された金融庁の報告書により、老後資金「2000万円」問題が注目されたこともマイナスに作用しています。「2000万円」というキーワードは6月に初めて11件登場しました。同月の「2000万円」関連現状判断DIは31.8でした。このキーワードで約0.1ポイント分、全体の現状判断DIを押し下げたとみられます。

6月全体の現状判断DI下落幅はわずか0.1ポイントだったので、「2000万円」問題が生じなければ、5~7月分の全体の現状判断DIの3ヵ月連続悪化はなかったことになります。7月に「2000万円」を採り上げた景気ウォッチャーは6名に、8月では3名に減少していますが、関連DIはどちらも16.7の低水準でした。

今年は全国的に梅雨明けが遅れました。6月の「梅雨」関連現状判断DIは45.1(46人)でしたが、7月は33.4に低下、前年同月の約5倍弱の125人が判断理由に挙げました。

ちなみに、7月の「梅雨」関連先行き判断DIは45人で56.1と、梅雨明け後の天候に期待していることが読み取れる数字になりました。8月の梅雨関連現状判断DIも50割れが続いたものの、45.2まで持ち直し、全体の現状判断DI(42.6)を上回りました。

「気温」関連現状判断DIは6月52.1(12人)の後、7月は33.8(74人)へと大きく低下しましたが、8月には41.4(32人)に戻りました。気温による夏物商戦の大きなマイナスの影響は、ある程度緩和されたことがわかります。

また、8月には台風10号の影響を受けた景気ウォッチャーも多かったようで、「台風」関連現状判断DIは37.1(62人)。7月の32.1(7人)から回答者が増えました。

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