はじめに
重要ターゲットは30~40代女性
こうした開発が始まった、おひとり様向けの新サービス。開発に携わったマーケティング本部の住家真由子さんは、“大人のお子様ランチ”のようなものを想定して、開発を進めていったといいます。
「お子様ランチは子供にとって魅力的なメニューが集約されています。その大人版ができれば、頑張っている人にとってのご褒美になると考えました」
実際にリサーチを進めていく中で最も大きかった声が、「1人で行きたいけれど、予約の段階で断られると寂しい」「そもそも1人予約が可能かどうかを確認するのが億劫」といったもの。であれば、最初から1人用のプランを用意すれば、気兼ねしなくてもいいはず。こうして生まれたのがライトプランでした。その一方で、「1人でもしっかり食べたい」という声もあったことから、コースプランを併設しました。
さらに、既存のダイナースクラブの会員は男性が多かったことから、新サービスの開発にあたっては今までと違う客層の開拓も想定。仕事に邁進していたり、仕事と家庭の両立に頑張っている女性が、自分へのご褒美として使ってもらう場面を想像して、開発を進めたそうです。
「お昼であれば、1人になれるという女性ユーザーが多かったので、ランチプランも用意しました。忙しい女性に、ちょっとした癒しの場を提供したい」(住家さん)
特に今回の新サービスの重要ターゲットに据えるのが、30~40代の女性。本会員が男性でも、家族会員の女性が満足すると、カードの退会率が下がる傾向がある、というのが理由の1つだといいます。
また、この年代は既存会員の娘さんたちの世代であり、主体的にカードを作っている女性が多い世代でもあります。「このサービスをきっかけに、女性のお客様がダイナースを持とうと思っていただけるとうれしい」と、住家さんは語ります。
レストラン側のメリットは?
このように、1人で有名レストランを楽しんでみたいと思っていた客にはメリットがありそうな、ごほうび予約。導入する店舗側にとっては、どのような恩恵が考えられるのでしょうか。
一般的には、1人客は調理や給仕の効率が低下するため、飲食店にとっては望まれざる客、という印象があります。実際、今回の新サービスを有名レストランに提案したところ、1人予約を入れると運営効率が悪くなるとの理由から、断られた店舗もあったといいます。
しかし最終的には、声をかけた店舗の9割は参画を表明してくれたそうです。「少しでも空席を埋めたいお店もありますし、今回の取り組みをきっかけにネームバリューを高めたいところもあります。さらに、ダイナースの会員層は高級レストランが求めている客層。どんどん告知したいというお店もありました」と、住家さんは振り返ります。
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また、店舗側としてもおひとり様需要は以前から認識していたものの、どうやって呼び込めばよいのか、わからない部分もあったようです。その点で見れば、ごほうび予約はレストランとしても“渡りに船”のサービスだったといえます。
9月24日時点では、40店舗で65のプランが用意されています。これらの店舗は、カード会員の利用履歴などを参考にしながら、実際に三井住友トラストクラブの社員が足を運んで確認した名店ばかり。現状ではすし店が入っていませんが、今後は入れていきたい考えです。
将来的には100店舗での導入を目指すという、ごほうび予約。エグゼクティブ ダイニングとごひいき予約に並ぶ、看板サービスとなるか。キャッシュレス化の流れの中で顧客の囲い込みが激化しているクレジットカード業界を生き抜くうえでも、ダイナースの今後を占う重要な一手となりそうです。