はじめに
最近、頻繁に見かけるようになった、ちょっと背が高いハッチバック型のタクシー。2017年にトヨタ自動車が発売した、その名も「トヨタジャパンタクシー」というタクシー用に開発された車両です。
日産自動車も同様の車種を製造していますが、このトヨタジャパンタクシーの市場占有率は9割に迫るといわれています。街中で見かけるこのタイプの車両の大半は、これだといって良いでしょう。
よく見かけるようになったのは、実際にものすごい勢いで普及しているから。セダン型の車両がタクシー用に普及し始めたのは1960年代前半ですから、かれこれ60年近くタクシーといえばセダンでしたが、4年後にはこのタイプにほぼ入れ替わるとすら言われているのです。なぜそんな事態になっているのか、ひも解いてみます。
「ノッポなタクシー」の特徴とは?
ドアはスライド式で、天井が高い一方、床は低いのが、トヨタジャパンタクシーの特徴。スロープも付いていますので、車いすに乗ったままで乗降できます。
天井につり革状のグリップが取り付けられているため、車いすからシートに移るのも楽なのだそうです。車内はかなり広く、大きなキャリーバックも楽々積めて、足元に置くことができます。
セダン型だと、後ろのトランクを開けて荷物を積むわけですが、重くて大きなキャリーバッグは持ち上げるだけで一苦労。荷物の多い外国人旅行者だと、シートには3~4人座れても荷物は人数分を積めない場合がしばしばですから、ドライバーの負担も大きく軽減できます。
燃料はLPG(液化石油ガス)とガソリンのハイブリッド型なので燃費が良く、タクシー会社にとっても導入インセンティブは大きい作りになっています。
都内では2年で75倍に急増
普及の勢いも、かなりのもの。全国の法人のハイヤー・タクシー会社の業界団体である一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)によれば、2017年3月末時点では、このタイプの車両は全国で1,048台しか走っていませんでした。
それが昨年3月末時点では4,772台へと4倍以上に増え、今年3月末時点では1万1,872台。たった2年間で11倍に増えたことになります。特に東京都は83台(2017年3月末)→ 2,008台(2018年3月末)→ 6,263台(2019年3月末)と、爆発的な伸びを示しています。
この統計は法人タクシーだけの統計で、業界団体が異なる個人タクシーの数値は含まれていません。しかし、全国でタクシーの総台数は約22万台、このうち個人タクシーは約3万5,000台だそうですので、趨勢を読むうえでは非常に参考になると思います。
全国19万台の法人タクシーのうち、まだ6%しかこのタイプの車両を導入していないともいえる一方で、この急速な伸び率は見逃せません。