はじめに

「さんまのスーパーからくりTV」や「中居正広の金曜日のスマたちへ」など、数々のバラエティ番組をプロデュースした角田陽一郎氏は、2016年12月にTBSを退社しました。

角田氏は、会社を辞める頃、業界や組織の在り方に違和感を抱いていたそうです。本来、マスコミは不特定多数の人に向けて「開かれた情報」をアウトプットする媒体なのに、むしろ閉鎖的な「井戸の中の理論」で動き、「閉じた情報」を提供しているように感じたからでした。

そこで角田氏は、井戸の「中の人」をやめて「外の人」になることを決意。いわく、「これこそが僕なりの出世です。つまり、既存のフレームから『世に出る』ことが出世なのです」。

現在、角田氏はフリーランスの「バラエティプロデューサー」として活躍しており、常に10個のプロジェクトのプロデュースを同時にしているそうです。案件の中には「自分自身」も含まれているようで、様々なプロジェクトを通じて出会ったヒト・モノ・コトを、セルフプロデュースにも活かしているとか。

角田氏は、日々どのような発想で「ヒト・モノ・コト」を捉え、セルフプロデュースのヒントにしているのか――。新著『出世のススメ』から、その一部をご紹介します。

※本稿は『「中の人」から「外の人」へ 出世のススメ』(角田陽一郎:著)の一部を再編集したものです。


「規則だから無理」という人を信用してはいけない

小学校の頃、夏休みに小学校のグラウンドで遊んでいて、あまりに暑くて百葉箱をのぞいたら、温度計が32度でした。当時の僕は驚愕したのですが、今や夏に32度と聞くと「今日はわりと涼しいな」とさえ思えてきます。

人が新しい事象に遭遇した時の衝撃は、それが繰り返されることで日常になります。その日常が続くことで、ある種のルーチンワークを生じさせ、その決まった日々の行動からある種の固定観念を脳内に生み出すのです。

僕らが今思う一般常識は、過去に生きた人々が体験した日常から演繹された一般常識でしかない。40度近い酷暑が連続するだけで一般常識はアップデートされ、「32度は涼しい」に変わるのです。そのアップデートはハプニングが起こるたびにいちいち起こります。そんな時代に生きる僕たちは、何を指南に生活すればいいのか?

これは僕自身の「アップデートが頻繁に起こる時代の処世術」ですが、ずばり「規則だから!」とか「仕事なんで!」と言う人を信用するな! これに尽きます。

何か新しいことをやろうとする時、僕らも論理立ててその正当性を説明しますが、「それは規則だからだめだよ」「君の言うこともわかるが、一応僕らも仕事なんでチェックせざるを得ないんだよね」といった、ぜんぜん論理的でもなく根拠もないような言質で新たな行動を阻止する輩たち。

最大の問題は、彼らの行動には、彼らから見れば極めて論理性や根拠があることです。既存のルールがそうなっているので守るのは論理的だし、規則を逸脱する行動を阻止することにも極めて根拠がある、と彼らは信じ切っているのが諸悪の根源なのです。

「成文化されたルールの文言はアップデートされにくい」という厄介な弊害が、この激変の時代には内包されています。でも、既存の規則やルールに縛られていると、むしろ僕らは身体が害されます。最悪には死を招きます。気温40度越も珍しくない時代に、「夏、子どもたちは元気よく屋外で活動しよう」という過去の常識を疑うことなく実行し続けたら、子どもたちはどうなるのでしょうか? 過去に照らし合わせて自分の人生を過去にはめ込んでいる場合ではないのです。

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