はじめに

何かを選択するときは「ジャケ買い」でいい

講演をすると、「AとB、どっちが正解か?」といった質問を受けます。僕は答えます。

「仮に今Aが正解でも、未来でそれが正しくなくなるかもしれない。だから人に勧められてAを選ぶ正解より、自分で仮にBを選択して失敗しても、自分で気づいてAを選び直すことができるタフさとバッファとその経験を持つことが正解ではないでしょうか」

ある講演ではこういう風に話しました。「いい教育ばかり受けることは、いい教育ではないです」

いい先生といい授業ばかり小学校6・中学校3・高校3で受けるのではなく、時に嫌な先生と接する経験をしたり、「あの学年のあの先生はいい先生だった」と後にその振り幅を実感できることが、人生の振り幅も育むし、その人のタフさとバッファと経験を形作るのだと思うのです。

人のおすすめばかりを選ぶと、「自分で選んで自分が失敗する」という経験がなくなります。結果、その人の選択肢と洞察力を鍛えることができません。いろいろなヒトモノコトの選択は、好印象を受けたほうを直感で選ぶ、いわゆる「ジャケ買い」でいいと思うのです。自分のインスピレーションで選んで失敗した記憶と経験が、次のジャケ買いを精緻にするのですから。

メリット重視での読書や勉強はしないに限る

僕が本を読むのは「楽しいから」。勉強をするのも「楽しいから」。インテリとは「知」を楽しむことだと思うのです。便利だから、役立つから、偉くなれるから、金持ちになれるから……といった理由で本を読んだり勉強するのは、なんか楽しくない。自分でそう気づいたり、知ることも「知」だと思います。

出世してから、ますます思います。「人生では、自分の楽しいことをやったほうがいい」と。だから、もし自分の楽しいことに読書や勉強が入らないのなら、やらなくたっていいと思います。「てい」とか「ポーズ」でやると、虚しいし、大変だし、そもそも楽しくないし。でも本当に楽しい読書や勉強の瞬間ってあるから、それを知らずに死ぬのはもったいないかもしれないですけどね。

楽しいことも、つまらないことも、たくさんあります。有意義な時間も、空虚な時間も、たくさんある。そのどれかを選ぶかは、結局、いつだって自分次第。身体と感情と知性の赴くままにいきます。だって僕は「出世」したのですから!

僕だけじゃなく、誰もがこの気持ちは年々歳々強くなっていくのではないでしょうか。ならば、「気持ちのいい時間」のほうを大事にすればいいのです。

「中の人」から「外の人」へ 出世のススメ 角田陽一郎 著


この本は「出世」といっても、部長や社長を目指す「立身出世」を勧めるものではありません。今いる場所から出発するのが出世(世を出る)です。もしあなたが自由に生きたければ、出世してみよう! 組織に縛られず心のままに生きる。現代の出世の形がここに!

(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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