はじめに

望ましい高齢期の生活についての意識

ここで、筆者の所属する第一生命経済研究所が全国の18~69歳の男女(17,462名)を対象に行った調査で60代男女の「望ましい高齢期の生活」についての回答をみると、「仕事はしたくない」という人が3割前後にとどまる一方で、「金額は少なくてもいいから、なんらかの収入を伴う活動や仕事をしたい」という人や「できるだけ収入につながる活動や仕事をしたい」と答えた人が多く、少数派の「無償でも、なんらかの活動や仕事をしたい」も含めると7割前後を占めます(図3)。

図3:望ましい高齢期の生活に関する60代男女の回答

資料:第一生命経済研究所『今後の生活に関するアンケート』、調査時期は2017年1月

これらの人では「家計維持のため、生活費を得るため」「自分の自由になるお金を得るため」「家計を補助するため」等の経済的理由とともに、「活動や仕事を通じて社会的に意義のあることをしたいから」「自分の知識や経験を役立たせるため」あるいは、「生きがいのため」「社会とのつながりをもつため」「健康にいいから」「生活が規則的になるから」といった自己実現や健康面にかかわる理由をあげる人もいます(図4)。

図4:60代男女が高齢期もなんらかの活動や仕事をしたい理由<複数回答>

資料:図4に同じ。「その他」は掲載省略。回答者は図3で何らかの活動や仕事をしたいと答えた人

ミドル期からの社会的活動の多様な効用を考える

先の内閣府の調査は60歳以上の男女を対象に行われたこともあって、「社会的活動」と有職者の仕事とのかかわりを読み解くことはできません。一方、ミドル世代には、個人的に行っていることも含めれば、仕事や事業、プライベートを通じて、すでに多様な社会的活動を行っている人もいるでしょう。

働き盛りのミドル世代が社会的活動を行う時間をつくるのは難しいことですが、シニア世代の実践者には、社会や家族を支える活動が、自身のQOL向上につながると感じる人もいるようです。経済面の人生設計と合わせて、考えておきたいテーマかもしれません。 

*1:内閣府が2018年11~12月に行った「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」にも同じ設問が盛り込まれている。その結果によれば、60歳以上における社会的活動の実施者は39.9%と2年半あまりで10ポイント近く増加している。
*2:調査票における「活動を行っている場所」の選択肢には「居住地域」「居住地域以外の日本国内」「日本国外」「インターネット上」があり、全体に占める回答割合はそれぞれ91.6%、7.6%、0.2%、0.3%(不明:0.3%)となっている。

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