はじめに
結婚式でイヤミのひとつも言おうかと思っていたけど
ある日、ユウカさんを含む女友だち4人がマリエさんと彼を囲みました。
「びっくりしたのは、彼がイケメンだったこと。それでいて人当たりもいい。斎藤工さんみたいな感じですね。マリエのことを大事に思っているのも伝わってきました。あのイケメンなら、もっと若くて美人にモテるはずなのにね、と私たちは自分の首を絞めるような発言をしながら帰りました。みんな完全に打ちのめされていた(笑)」
マリエさんがそのとき見せてくれた婚約指輪も大きなダイヤで、数百万は下らないというもの。愛はお金じゃないと思っていたユウカさんの気持ちが揺らぎました。
「目の前で大きなダイヤを見せられたとき、マリエがものすごい美人に見えたんですよ。マリエはかわいくていい子だけど、美人というタイプではない。それがダイヤに負けないくらい美しく輝いていた」
別の友人はこう言ったそうです。
「3万円のアクセサリーとあのクラスのダイヤをもらうのとは意味が違う。マリエは、あれだけのダイヤが似合う女だと彼が判断したわけでしょ。愛情がお金に変換されることもあるのよ。お金で愛が計れることもある」
その言葉はユウカさんの心に刺さりました。愛があればお金なんてどうでもいいというのは、お金のある男性と知り合えない自分を慰めていただけかもしれない、と。
お金があれば個人的な問題の9割は解決する、という話を聞いたことがあります。家政婦さんや専属のベビーシッターを雇えば家事や育児だって楽になるし、親には高級高齢者施設で手厚い介護を受けさせることもできます。「生活する」ことに必死にならずにすむのが「お金持ち」のよさかもしれません。
「この春、彼女の結婚式がありました。都内の一流ホテルで式を挙げたマリエは、やはり輝いていました。あんないい男を仕留めるなんてすごいと素直に思いましたね。ずっとモヤモヤしていて、式のときにいっそ彼女が昔、上司と不倫して妻に会社にまで乗り込まれた話でもしてやろうかと思ってたけど、そんなことはとても人として言えないと思い直しました。それがせめてもの私のプライドだったのかもしれません」
結婚だけが幸せではないし、相手が金持ちならそれですべてOKというわけでもありません。大事なのは結婚してからの夫婦関係の構築です。結婚はあくまでもスタート地点なのですから。
それがわかっていても、やはり親友が玉の輿に乗ったというのは、女性の心を揺るがすできごとなのでしょう。