はじめに
“前職の当たり前”が通じないメカニズム
たとえば、プレゼンテーションやロジカルシンキングなどのコミュニケーションスキルに自信を持っている人が「ちゃんと説明をしているのにどうもかみ合わない」と感じる場面では、前提の違いを見落としている可能性があります。しかしながら、前提の違いを発見することは、お互いの頭の中にある事柄を一致させ、互いの納得を得る大きな糸口となります。
今回の相談者は自身の伝え方(スキル)に課題を感じていますね。もちろん、伝え方に配慮することも大切ですが、転職直後というタイミングを考えると、まずは前提の違いを意識してみてはいかがでしょうか。
前職では当たり前と思っていたやり方も、新しい組織では同様のやり方で大きな失策をしていたり、障害があったりと、何か受け入れられない背景があるかもしれません。新たな提案をする前に、この組織でのやり方やその背景を理解する姿勢を示すことが周囲の信頼につながります。
組織には、これまでの成功・失敗体験や、慣習による暗黙のルールが存在しています。大事なのはルールそのものではなく、ルールが生まれた背景を知ることによって、組織が大切にしている価値観や新しいやり方が有効かどうかを探ることです。
前提の違いは悪いことではない
中途入社者がメンバーに加わることは、凝り固まった組織の前提を見直すきっかけにもなります。周囲に合わせることを意識するあまり、自身の意見や経験を抑えてしまうのではなく、相手を知ったうえで積極的な提案することがお互いにとって価値になるはずです。
さて、今回のご相談は、転職先の上司とのコミュニケーションがテーマでしたが、顧客への提案、他部署との交渉など、日常のさまざまな場面でも活用できる考えです。改めてお伝えしたいのは、今までの経験や立場が異なるのは当然であり、お互いの前提の違いは悪いことではないということです。
むしろ、前提の違いのある者同士がお互いを理解したうえで意見交換できれば、1人では思いつかないような新しいアイデアや改善策を生み出せるといった大きなメリットを享受できるのではないでしょうか。