はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。
33歳です。ネット系の保険会社で「死亡時1,000万円・入院5,000円/日」の最低限必要だと思う保障がついた月4,000円ほどの保険に入っていますが、結婚を機にいろいろと考えないといけないと思ってます。
某有名起業家は「保険など入るだけ損」と言っていたような気がするのですが、やはり保険には入ったほうがよいですか? もし入るのであれば、どのような保険に入るのがおすすめでしょうか?
条件としてはコストパフォーマンスが高く、最低限の保障があって家族が困らなければいいです。保険でお金を増やすということがどうもピンとこないので、掛け捨てでいいと思っています。保険会社に聞くと勧誘されそうなので、第三者の先生にお聞きしたいです。
(30代前半 既婚 男性)
深野: 結婚を機に生命保険の見直しを考えられているようですが、生命保険を考える際に最も大切なことは、生命保険は保険事故が起きなければ給付金を受け取ることができないということです。
また、日常的な病気やケガに備えるものではないことを念頭に置かなければなりません。順序が逆になるかもしれませんが、日常的な病気やケガは健康保険でカバーできるはずです。
さらに、同一の要因で治療費などが高額になった場合は、「高額療養費制度」で一定額までの負担で済むことになっています。これらの公的な保障でカバーすることができない医療費負担を補うのが、入院保障などの医療保険です。
ただし、自由診療などの高額の治療を受けなければ、自己負担が多額になるケースは少ないようです。手持ちの預貯金などで賄うことができるのであれば、医療保険も加入する必要はないということになります。
生命保険のメリットは?
「生命保険に加入するメリットは?」と問われれば、速効性があることが挙げられます。生命保険に加入すれば、その1週間後に事故にあったり病気になったりしても、保険金支払いに該当する保険事故であれば給付金などが支払われるからです。
まとまった預金を作るためには時間がかかるけれど、残念ながら、病気やケガはお金ができるまで待ってはくれません。合理的に考えるならば、医療保険は預貯金など医療費を賄う資金ができるまでのつなぎと考えてもよいでしょう。
「必要な時期」に「必要な保障」を
一方、生命保険といえば、一家の働き手が「万一のとき=亡くなったとき」に残された家族が経済的に困らないために加入するものです。独身、共働き世帯で、万一が起こったとしても経済的に困る人がいない場合は、死亡保険に加入する必要はないということになります。
ご質問からすると、独身時代に死亡保険金1,000万円の保険に加入されたようですが、残念ながら必要のない保険だったということになります。死亡保障は、「経済的に困る人=残された家族」ができた場合に必要になるものだということです。
そして、死亡保障がピークとなるのは末子が生まれたときと言われます。親の役目は、子供を社会に出すまでです。子供の成長とともに死亡保険金は徐々に減少していくということが基本的な考え方になります。
以上から、生命保険などは必要な時期に必要な保障を得られれば十分で、そのほかの期間は必要ないということになります。
保険では「一定期間の保障を買う」
保険にコストパフォーマンスを考えるならば、保険に貯蓄性を求めず、保険は保険、貯蓄は貯蓄と分けて加入する。つまり一定期間の保障を買うというスタンスがよいでしょう。
そして、保障が必要なくなれば、保険を止める、死亡保険金を減額するなどの見直しを適宜行うことが大切になります。
保険を利用してお金を増やすという考え方もありますが、保険を運用する予定利率が低いため、「保障を得ながら貯蓄も確保というのは幻想に過ぎない」と割り切った方がよいでしょう。
共済、ネット保険、保険会社の違いは、商品を含めた名称に違いがあるだけで、保険を設計、販売しているという点に変わりありません。また、各社によって主力商品に違いがある程度と考えればよいと思われます。