はじめに

9月20日に開幕した「ラグビーワールドカップ2019日本大会」は、日本代表が決勝トーナメントに進出するなど盛り上がりをみせています。開催期間が11月2日までと長期間にわたるほか、全国各地で試合が行われているため、応援に駆け付けた外国人観光客を見かけた方も多いのではないでしょうか。

こうした状況になると、気になるのが「インバウンド関連株」の投資妙味です。恩恵を受けそうなのはどんな企業で、こうした銘柄を今から買っても手遅れではないのでしょうか。


韓国人客の減少を補って増加

日本政府観光局(JNTO)が10月16日に発表した9月の訪日外国人客数は、前年同月比5.2%増の227万2,900人となりました。

ラグビーW杯の開催を受け、欧州や豪州からの訪日客数が増加しているほか、中国からの訪日客も25.5%増の81万9,100人と、9月としては過去最高を記録。日韓関係の悪化を受けた韓国からの訪日客減少を補う形で、全体としては増加傾向が続いています。

訪日外客数

訪日外国人観光客が増加を続ける中で、インバウンド関連株は株式投資家の間で人気を集めてきました。最初にインバウンド関連銘柄が注目されたのは2015年、中国人観光客の爆買いが話題になった時期です。

1人で高級化粧品を何十個もまとめて買うような中国人観光客が、ニュースになっていたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。インバウンド消費が急激に拡大し、高額商品を販売する百貨店株などが大きく上昇しました。

外国人の消費の“中身”が変化

しかしながら、このような購入は中国国内での転売を目的とした物も多く、2016年に中国政府が海外で購入した商品を中国に持ち込む際にかかる関税を引き上げると、急速にしぼんでいきました。

現在、インバウンド消費拡大で恩恵を受けることが期待される分野は、「モノ消費」から「コト消費」に移ってきています。

冒頭で触れたラグビーW杯では、ラグビーがイギリス発祥ということもあって、参加国には英国パブの文化が根付いている国が多くあります。そのため、観戦後にビールなどを大量に飲むことが期待され、英国風パブを展開するハブ(証券コード:3030)などが注目されました。

また、ラグビー観戦時には、多くの人が日本代表のレプリカジャージを着て応援をしています。このレプリカジャージは、ゴールドウイン(8111)の子会社であるカンタベリーオブニュージーランドジャパンが公式サプライヤーを務めているため、ゴールドウインへの関心が高まっています。

今から買っても手遅れではない?

ラグビーW杯以外のインバウンド消費をみても、コト消費の比率は高まっています。

大型テーマパークを運営するオリエンタルランド(4661)や、移動需要が高まっているJR東日本(9020)やJR西日本(9021)、成田国際空港の発着枠拡大で恩恵を受けるとみなされる京成電鉄(9009)などの鉄道株が、その代表例。宿泊施設向け予約管理システムを手がける手間いらず(2477)などが、新たに注目されています。

一般的に、このようなテーマ株はイベントが始まる前に買い付けを行い、イベントが始まって多くの方が注目するタイミングで利益確定を行うことが望ましいため、ラグビーW杯関連銘柄を手掛けるタイミングとしてはすでに遅い可能性があります。

ただ、来年にはラグビーW杯を上回る数の外国人観光客が訪れると予想される2020東京オリンピックが開催されます。引き続き、インバウンド消費関連銘柄には期待が持てそうです。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎>

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