はじめに

海外メディアで「おもてなし」がクローズアップ

大会期間のラグビー人気の盛り上がりには、海外メディアも大きな関心を寄せました。

W杯を取材していたラグビーの強豪国、フランスの日刊紙「ル・モンド」のフィリップ・メスメール記者は日本のテレビで大会前、ラグビーのルールなどをわかりやすく伝えるコーナーが連日にわたって組まれていたことに驚いていました。「フランスのテレビではおそらくない」(メスメール記者)。

南ア国家の練習風景
南アフリカ国歌の練習風景

同記者は記事の中で「日本のファンは(ラグビーの)習慣をよく理解している」などと指摘。その一例として、予選プールの南アフリカと「オールブラックス」の試合前、南アフリカ代表の「レジェンド」ともいえる左プロップのテンダイ・ムタワリラ選手が紹介された際に「日本のファンが南アのファンと同じように(尊敬の念を込めた)“ビースト(野獣)”のコールを発した」ことを挙げていました。

出場国や海外からの観戦客に対する日本の「おもてなし」も、大きくクローズアップされました。準々決勝の日本vs.南アフリカ戦。会場となった東京スタジアムの入場口付近に試合前、日本ファンの人だかりができていました。近づいてみると、歌声が聞こえてきます。「ンコスィスイケレーリーアーフリカ……」。対戦相手の南アフリカ国歌の練習をしているところでした。

日本人のファンと海外からのファンが、互いのナショナル・アンセムを教え合う姿も目にしました。観戦客にとっては試合終了後だけでなく、開始前から「ノーサイド」だったのです。

訪日客の称賛はプライスレスな資産に

大会運営をサポートした約1万3,000人のボランティアも、「おもてなし」の顔といえる存在だったように思います。スタジアムへ足を運ぶ内外のファンはもとより、取材するメディアに対しても笑顔を絶やさず、懇切丁寧に対応していました。観戦を終えて帰路に就くファンとハイタッチを交わしていた姿は印象的でした。

日本政府観光局(JNTO)によれば、9月の訪日外客数は前年同月比約5%増となりました。豪州、英国、フランスなど、ラグビー強豪国からの訪日客数が軒並み大幅増加。英国からは4万9,600人と、単月ベースで過去最高を記録しました。

予選プールのスコットランドvs.アイルランド戦前にインタビューした親子3人は、娘が日本に住み、両親がW杯観戦でニュージーランドから初めての訪日。母親に日本の印象を聞くと、「ラブリー」の一言が返ってきました。ほかにも「アメイジング」「ファンタスティック」などと、外国人客からは日本への称賛が相次ぎました。

スコットランドファン
スコットランドファンの親子3人

今大会での心温まる「おもてなし」ぶりは、SNSなどを通じて海外にも広く伝わったはず。この事実は、「観光立国」を掲げる日本にとって、単純な経済効果には置き換えられない、プライスレスな資産になったのではないでしょうか。来年の東京オリンピック・パラリンビックへ向けて、インバウンドの増加に弾みがつく可能性もありそうです。

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