はじめに
「100億円キャンペーン」「20%還元」といった大型キャンペーンが繰り広げられてきた、スマホ決済事業者による「ポイント還元戦争」に終わりの兆しがみえてきました。サービスの認知拡大やユーザー獲得が目的の派手なキャンペーンが減り、各社の「経済圏」での消費につなげる内容へと変わりつつあるようです。
LINE Payはプロモーション費用を縮小しており、バラマキ型から「本質的で効率的なマーケティングにかじを切った」と先日発表。PayPayに出資するヤフーの持株会社であるZホールディングス(HD)も、広告事業や金融事業など他の事業との相乗効果を狙っていく考えです。
大型還元キャンペーンの恩恵を受けてきたユーザーに、今後どのような影響が出てくるのでしょうか。11月1日に開かれたZHDの2019年4~9月期決算説明会の内容から探ります。
PayPay登録者は1900万人
サービス開始から約1年が経過したPayPayは、2019年7〜9月の決済回数が9,612万回、登録者数は1,474万人にのぼります。消費増税と政府のポイント還元施策の影響もあり、10月単体では、決済回数が約8,500万回。登録者数は約1,900万人(10月末時点)に達しました。
「(登録者数の増加は)期初の想定よりだいぶ上振れしている。われわれの想像を上回る」とZHDの川邊健太郎社長は説明。そのうえで、「伸び切ったのでは」という声に対しては、「まったくそんなことはない」と否定しました。
同社の調査によると、PayPayの認知度は昨年に「100億円キャンペーン」を実施してから競合サービスの中でトップに。利用意向については、消費増税に伴う政府のキャッシュレス還元がPRされるにつれて、競合を引き離す形で強くなっているといいます。
グループの総力をあげてリソースを集中して事業を一気に大きくして、「もう1つのヤフーを作る覚悟」で取り組んでいるというPayPay事業。5月にソフトバンクグループが増資を引き受け、ヤフーによるPayPayへの出資比率は25%となりましたが、ZHDの7~9月期の持分法投資損失(主にPayPayの影響)は50億円と、マイナスが続いています。
決済単体では「儲からない」
川邊社長は「PayPayが大きく収益化するには数年を要する」としています。スマホ決済の業界について「決済単体では儲からない。もっていけてフラット。その先のマネタイズの装置を豊富に持っている会社は、早く収益化されていく。決済だけの会社・サービスはなかなかつらいという構造」と分析します。
「当社は、主要なマネタイズとして、金融事業(クレジットカード事業、銀行事業)を持っていますし、マーケティングソリューションでインターネット上で大きなシェアを持っているので、ユーザー・取扱高が増えれば、マネタイズを組み立てていくことができる」(川邊社長)
実際、ヤフーカード経由でPayPayにチャージすると還元率が高まるキャンペーンの効果によって、7~9月期のクレジットカード取扱高は4,606億円(前年同期比56.9%増)に伸びています。さらに10月には、ネット証券国内最大手のSBIホールディングスと、金融事業における業務提携を発表済みです。
広告事業では、11月1日から「PayPayコンシューマーギフト」を開始しています。Yahoo! JAPANに掲載した広告の閲覧と、リアル店舗での商品購入の有無を結びつけるサービスで、広告の認知から最終的なオフラインの店舗での購買までを一気通貫で可視化することにより、広告主にとってマーケティングを合理化ができるという内容です。