はじめに

LINEは「消耗戦」から撤退宣言

投資が先行して赤字が続くスマホ決済事業者が多い中、プロモーション費用を抑える戦略に舵を切ったと明言したのがLINE Payです。LINEの出澤剛社長は、2019年7〜9月期決算発表のウェブキャストで、以下のように説明しています。

「キャッシュレス決済事業者間によるポイント還元合戦が激化し、消耗戦が続いています。第3四半期ではLINE Payの効率的成長を実現するため、LINEの強みによりフォーカスし、他のキャッシュレスソリューションとは差別化した戦略を図りました」

「300億円祭」などを実施した4~6月期の国内マーケティング費用は97億円でしたが、7〜9月期は大型キャンペーンを控えた結果、8億円に抑えることができました。1〜3月期と比較しても8割の減少です。

しかし、国内MAU(月間アクティブユーザー数)が4~6月期は約490万だったのに対し、大型キャンペーンのなかった7~9月期は約286万と激減しました。1~3月期と比べると約1.7倍に増加しているため、同社は「効率的な成長を実現した」としています。

PayPayの巨額還元は続かない?

LINE Payのプロモーション費用を抑える戦略に対して、PayPayはどう動くのでしょうか。

決算説明会でキャンペーンの今後について質問を受けたZHDの川邊社長は、「利用者が増え、定期的に使っていただけるようになれば、だんだんと使い勝手や用途のほうに軸足が移る。20%還元をずっとやるのは終わりにして、『ワクワクペイペイ』にしたり、キャンペーンは絞る基調の中でやっている」と語りました。

実際、11月1日から開始の「PayPayフリマ」と「PayPayモール」で最大20%還元のキャンペーンも、派手に宣伝はしていますが、PayPay初期の大盤振る舞いとは異なっています。「最大20%」の還元を得るためには、Yahoo!プレミアム会員やソフトバンクのスマートフォンユーザーであることが条件に含まれているのです。

高額還元キャンペーンの常連となったNTTドコモの「d払い」に目を向けても、還元を受ける条件に「dカード以外のクレジットカードは不可」が条件に加わるなど、決済事業者の「経済圏」への縛り付けが厳しくなってきたことがうかがえます。

これまでは還元率の大きなサービスを、キャンペーン期間だけに限って利用するユーザーも見受けられたスマホ決済。今後は、経済圏全体から得られるメリットの大きさを比べて、どの決済手段かを選ぶフェーズに変わっていくのかもしれません。

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