はじめに
日本の常識が世界の非常識となっている労働慣行
日本では当たり前のように行われている労働慣行であっても、海外では違法とされていることがいくつもあります。
たとえばアメリカでは、職場で同僚の年齢を聞いてはいけません。当然のように履歴書にも年齢は書きません。人種や性別だけでなく年齢差別につながる軽率な行動はご法度なのです。
フランスでは昨年、真剣にあることが検討されたそうです。それは、履歴書に氏名を記載することを禁止する法案です。一定規模以上の企業を対象に、氏名を記載しない履歴書を義務化しようとすることが真剣に検討されたのです。
昨年はそれが見送られたのですが、おそらく近い将来、この法律は成立すると思われます。
履歴書に氏名を書かないことが良い理由
履歴書に氏名を書かないというのは一見、不思議なことですが、この法案の背景にはフランスの社会問題になっている移民差別があります。
フランスでは若者の失業率の高さが問題になっていますが、中でも移民の若者は失業率が非常に高い。多くの移民が差別され阻害されていると感じています。
そこでこの履歴書問題です。履歴書に書かれた名前がジョルジュ・コルベールだったり、フランソワーズ・ブーランジェだったら、たぶん面接に訪れる候補者は祖父母の世代からのフランス人だと想像できます。一方でそれがアル・ハメドだったりバッシャール・サイードだったりすると、イスラム圏からの移民である確率が高いと採用担当者が判断することができます。
実際、フランスでは履歴書を提出した若者のうち、通常の失業者は履歴書段階では4分の1ぐらいの人しか就職差別を感じないそうですが、移民の失業者の場合は過半数超の失業者が履歴書提出時に差別を感じているそうです。