はじめに

人間の代わりに恐竜ロボットがホテルを切り盛り――。

そんな夢のようなホテルが実際に存在します。世界からも熱く注目される、その名も「変なホテル」をご紹介します。


スタッフは人間7名とロボット140台

3月15日、千葉県浦安市に「変なホテル舞浜 東京ベイ」がオープンしました。世界一生産性の高いホテルを目指して、エイチ・アイ・エスの子会社H.I.S.ホテルホールディングスが運営する「変なホテル」の2号店です。

一風変わった、その“変”なネーミングには「変化し、進化し続ける」という思いが込められており、ロボットなどの先進技術を積極的に導入。2015年7月に開業した長崎ハウステンボスの初号棟は、「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス世界記録にも登録されています。

今回オープンした同ホテルは、6階建て・客室数100室を誇る大型施設ですが、開業時の従業員はわずか7名。ここでは、9種類・約140台のロボットが人間に代わって滞在客をサポートします。

エントランスを入ると、ジャングルのような空間が広がり、まず出迎えてくれるのは大迫力の等身大ティラノサウルスです。

人間の代わりに働くロボットと聞くと、鉄腕アトムやPepperのような人間型のものを想像するかもしれませんが、このホテルのスタッフは恐竜。その理由は、東京ディズニーリゾートのお膝元、舞浜というホテルの立地にも由来しているそう。

「舞浜という場所柄、エンターテインメントを重視した設計にしています。恐竜が生息した時代にタイムスリップしたと感じていただけるような空間を意識。ロビーでお客さまをお出迎えするティラノサウルス、フロント業務を行う恐竜ロボットはもちろんですが、客室のコミュニケーションロボットも恐竜の卵をイメージしています」(変なホテル・広報担当者)

ほかにも、ロビーある大きな水槽を泳ぎ回る魚ロボットや、ゴミを回収するゴミ箱ロボットなど、なにからなにまでロボットづくし。

ファミリー層やカップル、女子旅などテーマパークへの来訪客による利用を想定。旅の楽しい思い出を倍増させるべく、エンタテイメント性を高め、ワクワクと心地よさを追求した設計がなされています。

そして、フロントでのチェックイン・チェックアウトに対応してくれるのは、ベルボーイの帽子を被った2体の恐竜ロボット。音声認識、もしくはタッチパネルのアナウンスに従って操作を勧めると、ルームキーが自動で用意されます。

この恐竜ロボットは、日本語のほか、英語・中国語・韓国語の4ヵ国語を巧みに操るため、訪日客対応もなんのその。海外客はパスポートを読み込ませるだけでチェックインができるそう。賢いだけでなく、時折、喉を唸らせ、くしゃみもするという愛嬌ある存在です。

AI搭載で滞在をサポートする恐竜のたまご

客室での快適な滞在をサポートしてくれるのは、AIを搭載したコミュニケーションロボット「Tapia(タピア)」。

宿泊者の顔と名前を認識することが可能で、接し方に合わせて応答を変えることができるそう。

ホテルの部屋の照明やエアコン、テレビのON・OFFなどの操作も、音声で指示するとタピアが即座に対応。人の手のかたちも識別できるので、じゃんけんができるという遊び機能も搭載されています。

ほかにも、希望者にはハコスコを貸出し、CGで再現された恐竜の世界を360度見渡すVR体験ができるなど、先進技術が盛りだくさん用意されています。

ロボット活用で宿泊費をリーズナブルに

そして、ロボット活用の効果は楽しさだけではありません。

「ロボット活用によって宿泊費を抑えることができ、リーズナブルに泊まれることも、ご好評いただいている一因と考えております」と、広報担当者が話すように、働き者のロボットが人件費を抑え、効率性を高めるというメリットも。

実際に宿泊料金をみると、4月の週末がスタンダードツインの部屋で約3万円(1泊2日・食事なし)、平日は同条件で1万2,000円からと、周辺にあるディズニーリゾートオフィシャルホテルや提携ホテルよりも安く提供されています。

もちろん“変”なだけでなく、日本で初導入されたという寝心地のよいマットレスや、深くて広いバスタブなどで快適性も追求。女子会利用も想定した、最大4名で泊まれる部屋も用意しました。

ロボットがもてなすという、ほかに類を見ないコンセプトには世界が注目。BBCやABCなど海外からも多くのメディアが訪れ、最先端ホテルとして紹介されました。

H.I.Sの澤田秀雄代表取締役会長兼社長は、「世界一生産性の高いホテルを目指し、ホテルの新しいビジネスタイプとして世界に展開したい」と今後の海外進出に意欲的。

まず、8月に愛知県のラグーナテンボス内に「変なホテル」3号店のオープンを予定し、ここでも新たな技術を導入するそうです。

野村総合研究所の試算によると、10~20年後には日本の労働人口のおよそ半分の仕事がAIやロボットに代替可能になるといわれています。効率性とエンタテインメント性、両面からホテル業界に革命を起こす変なホテルの今後に注目です。

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