はじめに

日本企業の底打ちは近い?

日本では、2019年度の1株当たり利益は前年同期比-3.1%と小幅な減益予想となっています。業種別では、大型買収の特殊要因で「ヘルスケア」が大幅減益となる一方、エネルギー価格の下落によって利益が押し上げられる「公益」が大幅増益となっています。

それらを除くと、「素材」「工業」が大きめの減益で、製造業の弱さが続いています。冴えない半導体市況のほか、景気減速と貿易問題で中国関連企業の業績も弱めの予想となっています。

日本2019年度

先行きについては、10~12月期に米国、欧州ともに増益に復帰する予想となっており、7~9月期がすでに業績の落ち込みの底だったとの見方がコンセンサスとなっています。

日本でも、保守的な傾向にある各事業会社の会社予想こそ減益が続く見通しとなっていますが、一部企業の説明会では底打ちのタイミングが近づいていることを示唆するコメントも聞かれ、市場では早くも下期の増益転換が期待されています。2020年度には同6.5%の増益に復帰する予想となっています。

日本2020年度

足元では米中貿易交渉が暫定合意に近づいており、追加関税の延期どころか、これまでかけた関税の一部撤廃も議論されています。世界の輸出と連動する傾向にある米ISM製造業輸出指数は、貿易問題の深刻化を受けて急落した9月から大きく回復しています。

さらに一部関税の撤廃が実施されれば、これまで弱かった製造業を中心に増益への転換が確かなものになるでしょう。一方、米中貿易交渉が再度決裂するようなことがあれば、業績が再度悪化に転じる可能性があります。引き続き景気、業績の先行きを見る上でも米中貿易交渉に注目が集まります。

<文:ファンドマネージャー 山崎慧>

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