はじめに
発信元は中国・延吉
「すぐに、仕事はできるものですか?」と尋ねると、「これは慣れだよ。1日、2日電話をすれば、慣れてくる」と答えます。男はさらに、「キャッシュカードを騙し取るマニュアルを読んで、10時~17時まで、名簿を見みながら電話をかけるんだ。騙せる人に会えない時は、何百人に電話をかけることもあるよ」と、悪びれることなく、話します。
どこで電話をかけるのかを尋ねると、「中国の延吉といって、北の方だね。隣が北朝鮮」今、男が電話をかけているのも、その場所からだといいます。男は「日本はダメだね、捕まってしまうから。中国から電話をかけている分には、証拠が残らないから」と話を続けます。
あくまでも男の言い分ですが、中国から電話をかけても、いろんな国の基地局を経由して日本に電話がつながるようになっているので、発信地を特定されにくくなるということです。「日本はだめだ」、男がそういった理由には、2016年12月施行された通信傍受法の改正があるかもしれません。
これまで、電話の会話やメールが傍受できるものは、薬物や銃器などの犯罪に限られていましたが、その対象が広がり、組織的犯罪の振り込め詐欺にも適用されるようになりました。これにより、詐欺事件が摘発された事例もあります。それゆえ、日本の捜査が及ばない国外から詐欺電話をかけて、摘発を逃れようとしているといえます。
報酬の受け取り方について尋ねると、「月に70万~100万円を稼げる。銀行振り込みでもいいけど、足がつく可能性があるので、円ではなく、中国の元でお金を受け取る人が多いよ」と言います。「いつから、電話をかけているのですか?」と尋ねると、半年前に掲示板を見て、中国にきていると答えました。「君は、やるの? やらないの?」「ここにいる中国人のボスは気が短いからね。仕事をするなら、すぐに決めた方が良いよ」などと言います。
ここからみえてくるのは、“日中が組んで”詐欺を行っている実情です。今年、タイやフィリピンから詐欺の電話をかけていた大規模なグループも摘発されましたが、今は国内からだけでなく、海外のいたるところに拠点を置いて、電話をかけているのです。
海外でも、結局は捕まる
しかし断っておきたいのは、こうした電話をかける架け子にせよ、詐欺のお金を受け取る受け子にせよ、結局は捕まるということです。
この中国のグループは、帰国後、続々と、メンバーらが逮捕されています。その規模は、50人と言われており、タイのグループよりも大掛かりな組織といえるかもしれません。この間も、フィリピンで詐欺の電話をかけていたグループ36人も摘発されています。海外だから、悪事がばれず、捕まらないということはありません。
お金に困っているからといって、安易な気持ちで闇バイトの誘いに乗ってしまうと、一生、後悔することになりますので、絶対にやってはいけません。