はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。

49歳の会社員です。持家あり、年収は1,200~1,400万円程度。一般的に普通の会社員がアーリーリタイアをするためには、リタイア直前に最低いくら必要なのでしょうか? 「定年後の毎月の支出×12ヵ月×余命年数+修繕費など予備費」と考えると、62歳時点では4,000万円ほどあればいいのかなと考えております。

一人息子がまだ大学在学中なので、預金は1,000万円です。定年後は1年間、嘱託として働いたあと、辞めたいと考えています。もう少し運用がうまく回ったら、早期退職制度を利用するのも悪くないと考えております。
(40代後半 既婚・子供1人 男性)


深野: 早期リタイアについてのご質問ですが、内容を拝見した限り、通常のリタイアのように感じられます。通常、質問者の方のいう「アーリーリタイア」では、定年退職時よりも早くリタイアすることを指すからです。

さて、早期リタイアの定義は別として、質問者の方が書かれている62歳を基準に考えたいと思います。

質問者の方は、現在49歳ですから、公的年金を満額受け取ることができるのは65歳からになります。そのため、65歳になるまでの3年間は無収入です。この無収入時代の3年間に加えて、65歳以降に必要なお金がリタイア直前までに準備しなければならないお金になります。

ただし、65歳以降もお金の運用は継続することから、当初に必要と考えていたお金よりもやや少なくても大きな問題にはならないでしょう。

リタイア後に必要な額を試算してみましょう

大まかにいえば、定年退職後の生活費は退職前の7~8割となるケースが多いようです。

ご質問者の方は年収が高いことから、総務省などが公表する老後の生活費データよりも多額になる可能性が高いと思われます。概してリタイア前の年収が高い人ほど、老後の生活費は高くなる傾向にあるからです。

質問には具体的な生活費が記載されていないため、統計データを活用しますが、総務省の「家計調査報告」によれば、2人以上世帯の60歳から69歳までの生活費は27万7,283円、70歳以降は23万8,650円です。

この数字に合わせて計算してみましょう。

62歳から69歳まで:
27万7,283円×12ヵ月×8年=2,661万9,168円

70歳から85歳まで:
23万8,650円×12ヵ月×16年=4,582万800円

奥様が2歳年下で90歳まで生き、夫婦時代の60%の生活費と仮定:
23万8,650円×60%×12ヵ月×7年=1,202万7,960円

合計すると8,446万7,928円

この金額に家の修繕費、旅行などのレジャー費用、車の買い替え費用、子供の結婚資金の援助など、さまざまな一時金を加えていったものがリタイア後に必要なお金になります。

合計で1億円以上になると思いますが、先に述べたように質問者の方は年収が高いことから、この数字の2~3割増で考えた方が無難だと思います。つまり必要額は、1億2,000万円から1億3,000万円前後になるでしょう。

必要金額から公的年金を差し引くと?

そこから、受け取ることができる公的年金額を差し引くことになります。

公的年金として、2017年度に厚生労働省が公表するモデル受給額は22万円前後。年収を考慮すれば24万円前後は受給できると思います。

65歳から85歳まで:24万円×12ヵ月×21年=6,048万円
奥様分:24万円×60%×12ヵ月×7年=1,209万6,000円

合計すると7,257万6,000円

先ほどの必要額から収入を差し引くと、4,740万円から5,740万円程度は準備する必要がありそうです。

この金額から退職金を差し引くと、ご質問に記載されているように4,000万円前後の準備が必要かもしれません。

また、ここでの金額はあくまでも試算なので参考に過ぎないことをお忘れなく。

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