はじめに
コイツにふさわしいスキルを磨きたい
強烈な加減速、ハードなコーナリングを要するサーキットでも、安定した走行を実現する
拍子抜けするほどあっさりと走り出します。特別な操作も癖もありませんし、何よりも乗り味がなんともソフトで優しいことから、こちらが油断してしまいます。ごくごく普通に使うなら、とても使いやすいフレンチハッチとして買い物でもお迎えでもなんにでも使えます。
でも今日はサーキットを走る時に必要な性能を引き出すために「レースモード」にセットします。するとエキゾーストがかなり勢いよくボボボボボッっと響き渡り、私たちにはとても心地いい音が聞こえてきました。早速コースに飛び出し、最初はウォーミングアップ走行、と思いましたが、サウンドが変わったと同時にエンジンのトルクアップとレスポンスアップを少しでも速く味わいたくなり、途中からけっこう活発な走りに突入です。
当然、サーキット走行を想定したセッティングですから、アクセルを踏み込むほどに安定してグイグイと引っ張ってくれます。さらにブレーキの聞きも唐突すぎず、かといって踏み応えが頼りないこともなく、いい塩梅で加速も減速もこなしてくれるのです。この路面とのコンタクトのレベルの高さはさすがと言えるもので、どんどんと笑顔になっていきます。
「TROPHY」と名付けられた専用アルミホイール。赤い4ピストンのモノブロックキャリパーがその奥で存在を主張しています。ブリヂストン ポテンザ S001を標準装備し、広い接地面で路面をしっかり捉えます
もちろんサーキット走行とはいえ、試乗会ですから抜きつ抜かれつは禁止です。心置きなく自分のレベルに合わせて走ることが出来ます。それでも筑波の最終コーナーで軽いスキール音と、わずかなスリップを伴いながら、安全に駆け抜ける事が出来たのはサスペンションのセッティングの良さ、このクルマの素性の良さを強烈に感じることが出来たシーンでした。とくに4コントロール(4輪操舵システム)はなんとも安定したコーナリングレスポンスを実現してくれるので、性格に走行ラインをトレースし、まるで自分の腕が上がったような感覚になる。こうしてどんどん楽しくなるのだが残念ながら周回をこなし、さらに楽しくなってきたところで試乗は終了。“久し振りの楽しさ”にそれなりに興奮していたのでしょうが軽く汗ばんでいました。
ここでサーキットモードを解除してみると、また日常的な乗り心地が蘇り、なんとも使い勝手のいいフレンチハッチに戻っているのです。当然のように日常的にサーキットモードはほとんど使うこともなければ、助手席に家族が乗っていたりすれば、むしろ嫌われるモードかもしれません。でも“イザとなればケンカには強いんだぜ”と言うところは、密かな楽しみになるわけです。そのためにR.S.よりも50万円多く支払う。難しい判断かもしれませんが、少し無理しても私は見栄も張りたいのでトロフィーを選択します。あ、その前にこいつをキッチリ使いこなせるだけのスキルを持ち合わせていないと、本当の宝の持ち腐れになりますが……。