はじめに

女子大生に入れ込んでしまった夫

エイコさんは仕事で男性と会う機会も多いし、わざわざ恋をする必要もないと思っていました。ところが夫は、早速、出会い系サイトにアクセスしたようでした。

「2週間くらいたったとき、女子大生とデートしてみたと夫が言い出したんです。嫉妬は起こらなかったですね。ただ、どんなデートをしたかは気になりました。夫は女子大生に恋心はわかないけど、うちが息子だけだからちょっと楽しかった、と」

そんなことをして何の意味があるのかと勘ぐっていたエイコさんですが、半年ほどたつうちに、夫はすっかりその女子大生にのめり込んでいたようでした。

「家でもときどきぼんやりしたり、息子が話しかけても気づかなかったりと、妙だなと思うことが続いたんです。具合が悪いのか、会社で何か悩みでもあるのかと私も心配になりました。だけどある晩、夫ががばっと私の前に両手をつき、『申し訳ない』と頭を下げたんです」

どうしたのと聞いても,夫はなかなか真実を言いませんでした。何度も促して、ようやく夫が子どもの学費用にためていた貯金を使ってしまったことを白状したのです。例の女子大生に貢いでしまったのだと。

「これには私、激怒しましたね。長男は理工系なので、学費がかかるんですよ。学費用の貯金は夫に任せていて、そうとう貯まっていたはずなのに」

夫が言うには、その彼女は天涯孤独のため自分で稼ぎながら大学に通っていたそう。夫と知り合ってから体調を崩し、仕事も思うようにできなくなってしまいました。このままだと退学するしかないと泣いたといいます。夫は思わず300万円の貯金を引き出して彼女に渡しました。そしてそれきり彼女とは連絡がとれなくなったのです。

「最初から女子大生なんかじゃないんですよ。夫は学生証を見たと言っていたけど、そんなの偽造できるでしょ。くだらない提案をして、結局,ドツボにはまって、バカみたい」

エイコさんは吐き捨てるように言いいました。息子の学費は彼女が管理している貯金から出したが、次男も理工系の大学に行ったら、経済的にはかなり厳しくなります。

「そんなこと息子には言えませんしね。それ以来、夫の小遣いは月2万(笑)。夫もよほど堪えたのか、最近はせっせと家事をやるようになりました」

だってね、とエイコさんは小さな声で続けます。

「夫は結局、彼女とはつきあってないんですよ。いつも奢らされただけ。怒らないから本当のことを言ってと頼んだら、『一度でもオトナの関係になっていたら、あきらめもつくんだけど』と本音をつぶやいていました。まあ、真実はわかりませんが、夫の性格上、本当に何もなかったんじゃないかと思うんです」

もともとマジメで、女性に対する免疫力もなかった夫が、ほんの遊び心を出したのが間違いでした。もちろん、夫婦の夜の生活は復活していません。彼女はむしろ、「今後一生、夫とはしないと宣言してやりました」と苦笑します。

夫の立場になってみると、せつないやら情けないやら。慣れないことはしないほうがいいのかもしれません。

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