はじめに
少額を大勢から取る
そこでいったん切って、もう一度、かけ直しました。すると、同じ女性が出てきます。しかもよく会話を聞くと、先ほどと同じような間合いと言葉の流れではないです。ということは、この会話もまた、自動音声だったのです。この女性の言語は、レバノン訛りのアラビア語ではないかともいわれますが、はっきりとしたことはわかりません。ワン切り電話にも、いろんなパターンがあるようです。
騙しと言うのは、四則演算的発想で罠を仕掛けてくるものです。今や、携帯電話を多くの人が持っていますので、そこに詐欺師は目をつけ、数多くの電話にワン切りというアプローチを仕掛けます。そして折り返しの電話を待ち、一人から数百円、数千円といった、あまり懐が痛まないような金額を払わせます。
一人から取る金額は少ないかもしれませんが、より多くの人から電話があれば、掛け算式で儲かることなります。現在の世界の人口は、77億人といわれていますので、全世界の電話をもっている人から、折り返しの電話をさせれば、膨大な金が手に入るというわけです。しかも、今回見てきたように、自動音声を使うなど、電話の受発信は、すべてコンピューターシステムを使っているので、人件費はかからず、詐欺を行う側は、ぼろ儲けということになります。
ちなみに、最初にかけた、国際ワン切り電話での歌を調べてみると、「Holding On」という実在する楽曲でした。この歌は、かなり前のもので、まさか歌手本人も、勝手に詐欺集団に音声ツールとして使われているとは思ってもいないことでしょう。
タイトルを翻訳すると、「つかまって」「しがみついて」になります。原曲は恋愛の歌なので電話は関係ありませんが、「hold on」には「このまま(電話を切らずに)お待ちください」という意味もあります。後半の歌詞のなかには「永遠に続く時、私はあなたにつかまっている」とありますが、ずっとこの電話を保留し続けていれば高額な国際通話料金が発生することを、暗に示しているようにも思えます。
「ホールディング オン~♪」「ホールディング オン~♪」と、「(電話を)切らないで」「切らないで」をサビの部分で繰り返して聞かせたのは、そんな意味もあるのかもしれません。詐欺を行う側は、ウィットを効かせたつもりでしょうが、このような手口を許すわけにはいきません。
SNSを見ると、最近は、アフリカだけでなく、ルーマニアやベルギーなどのヨーロッパからもかかってきているようです。くれぐれも、何のメッセージも残さない、海外からのワン切り電話は、無視して応じないようにしてください。