はじめに

社会保険という第二の税金

こうしてみると、ある程度の利益が確保できるようになったら会社を設立し、給与収入にしたほうが断然税金がお得になるような気がします。ところが、ここで注意しなければならないのが、税金と同じくみなさんについてまわる社会保険料です。

個人事業主の場合は、基本的に国民健康保険、国民年金に加入することになります。

会社員の場合は会社を通じて健康保険、厚生年金に加入しますが、社会保険料の半分を会社が負担してくれるため、個人で負担する社会保険料は少ないような気がします。

しかし残り半分の社会保険料は会社が負担しているため、自分で会社を作る場合、結局は自分ですべての社会保険料を負担しているようなかたちになるのです。また国民年金に比べ、厚生年金の方が保険料は高くなるのが通常です(その分、将来の年金給付も増えます)。

税金と社会保険料の二つを考慮すると、社会保険料の金額が最大値(毎月の給料が135万5,000円以上の人)に達しない限り、個人事業主でも会社経営でも手元に残るお金がほぼ変わらないことになります。この点、政府はよく考えて仕組みづくりをしているという印象を受けます。

消費税がかかるようになったら要注意

収入(売上)が1,000万円を超えると、原則としてその2年後から消費税の申告が必要になることをご存じの方もいらっしゃることでしょう。

個人事業主の場合、1月から12月までの1年間で税金を計算することになります。そのため、たとえば平成29年の売上が1,000万円を超えると、平成31年分から消費税の申告、納税が必要になるのです。

この場合、平成30年中に会社を設立して個人事業を廃業してしまったら、どうなるのでしょうか。今度は会社の売上が1年間で1,000万円を超えると、その2年後から消費税がかかることになります。2年を待たずに申告が必要となる場合もありますが、会社設立第1期目で売上が1,000万円を超えると、第3期目から消費税の申告が必要となるのが一般的です。

個人事業主が会社を設立すると、契約の変更手続きや会社設立にかかる費用も必要です。会社の方が、事務処理にかかる手間や経費も増えるかもしれません。それでも、収入が安定して増加している場合は、このタイミングで会社をつくり、消費税の申告を遅らせるのも一案です。

会社をつくると役員社宅など、個人事業主時代には経費にできなかったものが経費になるなどメリットもあります。信用力も上がり、電話代や銀行手数料などが法人価格になって経費も多少増えることになるでしょう。社会保険や税の手続きが煩雑になるため、専門家費用もこれまで以上に必要になるかもしれません。

事務処理などが気楽な個人事業主として働くか、会社を設立して事業規模を大きくしていくか、一人ひとりに合わせた起業の仕方を考える必要がありそうです。

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