はじめに
実施企業に共通する2つの要素
業種別に株主優待実施率をみると、食料品の83%から石油・石炭製品の9%まで、業種ごとに大きな開きがあります。
企業間取引を主体とする機械、電気機器、素材産業では実施率が低い傾向がある一方で、消費者向けエクスポージャーが大きい小売業、食料品などで実施率は高くなっています。自社製品・サービスなどを優待品として提供することで、事業内容を知ってもらい、それによって宣伝効果も見込まれます。
株主優待実施企業の資本効率や成長性は非実施企業に比べて、やや劣るようです。業種別の影響を取り除くために、食料品、小売業、卸売業、サービス業、情報・通信業の5業種を対象に株主優待実施企業と非実施企業の資本効率、成長性を比較してみました(会計基準・決算期変更企業を除く)。
ROE(自己資本利益率)は、情報・通信業では大きな差はありませんが、食料品、小売業、卸売業、サービス業では株主優待非実施企業のほうが高い傾向があります。売上高成長率については、食料品を除いた4業種で非実施企業のほうが高いという結果が得られました。
株主優待の実施と資本効率・成長性の間の因果関係は明らかではありません。株主優待実施企業のほうが数値の低い要因として、成熟企業のほうが株主優待を実施する傾向が強いこと(設立年月日が2000年以前の企業の株主優待実施率は40.8%、2001年以降は33.4%)や、小額を投資する個人株主の増加から経営規律がやや緩みがちになっている可能性が考えられます。