12月は、1年の中でも新規に上場する社数が最も多い月です。今年も昨年より1社多い21社が12月中に上場する予定です。

その中に、7~8年前から証券会社が上場主幹事の座を狙う“有望上場予備軍”として位置づけられていた企業の名前がありました。23日に上場した、酒類販売チェーンの「カクヤス」です。

創業は1921(大正10)年。直近のIPO(新規公開)銘柄の中では突出して古い歴史を持ち、年商規模も1,000億円と、他の銘柄とはケタ違いです。なぜ街の酒屋さんが、ここまで大きく成長できたのでしょうか。


かつては既得権益に守られた業界だった

東京23区内と川崎市、横浜市、大阪市などでは、缶ビール1個から1時間以内に配送料無料で届けてくれるカクヤス。今でこそ小売店「なんでも酒やカクヤス」を多数出店していますが、もともとは保守本流の酒屋さん。それも飲食店にお酒を卸す、業務用の卸問屋さんでした。

現在社長を務める佐藤順一さんは3代目。父の代まではJR王子駅近くの倉庫兼本社1ヵ所だけで商売をしていました。当時の年商は十数億円。それを、1993年に就任した順一社長の代で1,000億円企業に成長させました。

かつて酒類販売は典型的な規制業種で、酒類販売免許を取るのは大変でした。半径何メートル以内に何軒、人口何人に何軒といった「距離規制」と「人口規制」、二重の参入規制があったので、酒類販売免許を持っているということ自体が希少価値でした。

その分、同業者間のテリトリー侵害は絶対タブー。競争原理がまったく働かない、成長もしない代わりに淘汰もされない世界だったようです。

淘汰を免れるために打って出た大勝負

その業界に規制緩和の波が押し寄せます。1998年、当時の細川護熙内閣が規制撤廃を決めたのです。2001年に距離規制が撤廃され、2003年には人口規制も撤廃。そうなると、大手の量販店やコンビニが酒類販売の業界に一斉に参入してくることは目に見えていました。

何しろ、当時のコンビニは酒類を扱えることが大きなアドバンテージになったので、街の酒屋さんを中心に、コンビニへの転換の勧誘を集中的に進めていたくらいです。

規制緩和までに何らかの形で差別化を図らなければ、淘汰されるのみ。そこで順一社長が考えついたのが、東京23区内での無料お届けサービスでした。規制撤廃が正式決定する以前から限られた範囲で試験的にやっていたサービスを、本格展開することにしたのです。

ただ、このサービスを実現するには、拠点となる店舗の大量出店が必要になります。銀行から可能な限りの借金をし、綱渡りの資金繰りを続けながら、何とか規制撤廃までに拠点を整備。一般家庭向けだけでなく、業務用でも無料お届けサービスを始め、これが軌道に乗って、淘汰を免れたわけです。

今ではヤマト運輸や佐川急便が当たり前に使っている、大型のボックスを接続した三輪自転車も、配達中に駐車違反に問われないようにと、カクヤスが始めたもの。もっとも、軌道に乗るまでは大変で、同業者からの妨害や嫌がらせも尋常ではなかったようです。

それでは、同社を投資対象として見た場合はどうでしょうか。