はじめに

2019年の株式市場を振り返ってみると、年初は米中間の貿易戦争が激化するとの見方から、株価が大きく下落してスタートしました。が、その地点が年間を通じて株価の底となり、年末にかけて上昇が続く1年となりました。

このような状況の中、個人投資家の間で関心が高まっているのがIPO(新規株式公開)銘柄です。しばしば人気化するIPO銘柄ですが、なぜ今、改めて関心が高まっているのでしょうか。そして、投資するうえで注意すべきポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。


カネ余り相場でIPO銘柄を物色か

本題に入る前に、年初来の株式市場とIPO銘柄を取り巻く状況について、整理しておきます。

米中貿易戦争は確かに実体経済に影響を与え、輸出関連企業を中心に多くの企業が減益に追い込まれました。しかし、それを受けてアメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、年初の利上げ方針から一転して、利下げに戦略転換しました。加えて、Tビル(国庫短期証券)の購入など実質的な量的緩和の再開に動いたため、株価は上昇していきました。

このように、実体経済は低迷している中で株価が上昇してきたことで、個人投資家の投資姿勢は二極化しています。

たとえば、11月29日の配信記事で触れた、日経平均株価が値下がりすると利益が得られるETF(上場投資信託)である「日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」は、12月に発行済み投資口数が過去最高を更新しました。つまり、慎重姿勢の個人投資家は健在というわけです。

一方で、「過剰流動性相場(カネ余り相場)」が改めて始まるとみる個人投資家も出てきています。こうした人たちが、実体経済が低調な中でも高い成長が期待できるIPO銘柄などを積極的に物色しているのです。

IPO投資には2つの手法がある

IPO銘柄への投資手法には、大きく分けて「プライマリー投資」と「セカンダリー投資」の2つの方法があります。

「プライマリー投資」とは、新規上場株(IPO株)に公募で応募し、上場前に手に入れ、上場後に売却することで利益を上げるものです。一方の「セカンダリー投資」とは、証券市場に上場した直後に購入するもので、手法としては普通の株式売買と変わりません。

このうち、プライマリー投資は特に人気が高く、12月25日現在、2019年に東証マザーズ市場に上場した63銘柄のうち、実に55銘柄が公募価格から上昇して初値を付けました。

初値上昇率ランキング

ただ、プライマリー投資は誰でもできるわけではなく、証券会社に申し込みを行い、抽選などで割り当てられた投資家のみが購入できるため、なかなか手に入れられない状況です。

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