はじめに

ストやデモは日常茶飯事

ストに合わせて大規模なデモも行われています。仏最大の労働組合であるフランス労働総同盟(CGT)によると、12月17日のデモには全国で約180万人が参加したということです。

フランスのストやデモは日常茶飯事。筆者はビジネスフランス語の教師から「早く覚えたい大事な言葉は(フランス語でストライキを意味する)グレーヴ」と教わったことがあります。

抗議行動を通じて自らの意思を表現するのは1789年の革命以来、脈々と受け継がれるフランス人のDNAともいえるでしょう。「初めてデモに参加したのは高校生のとき」。こうした経験が当たり前ともいえる多くのフランス人の眼には、日本の若者がとてもおとなしく映っているようです。

実際、今回のストやデモにも理解を示すフランス人が少なくありません。仏週刊紙「ジュルナル・ドゥ・ディマンシュ」の依頼で同国調査会社のIfopが12月19・20両日に実施した世論調査では、69%がマクロン政権の年金改革に賛成する一方で、51%が一連の抗議行動も支持しています。

対立は年明け以降も長期化

交通機関運休の混乱がいつまで続くのか、見通しは立っていません。政府は年明け1月7日に年金改革をめぐって、労使双方との協議を行う方針を明らかにしました。これに対して、CGTのフィリップ・マルティネス書記長は「協議に招待を受けていない」などと仏メディアに語っています。

政府側にも改革で譲歩する考えはなさそうで、年明け後も両者の対立は長期化する可能性があります。そうなれば、同国経済に悪影響が及ぶのも避けられないかもしれません。

フランスでは昨年11月、燃料税の引き上げに端を発した大規模なデモが全土で勃発。「黄色いベスト(ジレ・ジョーヌ)」を身にまとった人たちが中心となった抗議行動は毎週土曜日の恒例行事となり、今年に入ってもしばらく続きました。暴徒と化した一部の参加者は商店などを襲撃し、警察と衝突する騒ぎにも発展しました。

「ジレ・ジョーヌの危機」の記憶が鮮明に残る中で起きた、今回のゼネスト。フランスの2019年は、皮肉にも「デモで始まりストに終わる」という同国らしい年になってしまった感もあります。

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