はじめに

介護保険制度は発足から今年で20年目の節目を迎えますが、その財政は逼迫し、保険料の値上げや自己負担率の増加などが続いています。

そんな中、注目されはじめているのが、介護の設計図であるケアプランの作成に、AIを利用しようという動きです。

果たして介護という人間の尊厳に関わる分野を、AIに携わらせることに不安材料はないのでしょうか…?


今年は介護保険がスタートして20年の節目の年

2020年は介護保険制度が2000年に発足してから、20年を迎える節目の年でもあります。20年前、急速に進む我が国の高齢化を見越して、それまで家族、特に嫁が担っていた介護を、家族が抱え込むのではなく社会全体で担っていこうという考えのもと、この介護保険はスタートしました。

介護保険の保険料は、40歳以上の世代は社会保険と共に、65歳以上の人は年金から天引きされて払うようになっています。

40歳以上の人でも、自分が介護保険の保険料を払っていることをあまり意識していない人もいるかもしれませんが、会社の給料から引かれている社会保険の明細や、国民健康保険料の明細を見れば、そのなかに介護保険料も含まれていることが分かるはずです。

この介護保険料と税金によって構成される介護保険の財源をもとに、高齢者は介護にかかるサービスを原則1割負担で受けられることになっています。

しかし、この20年に急速な高齢化が進んだことにより介護にかかる費用は増え続け、その結果として、介護保険料は値上がりし、高齢者がサービスを受けたときの自己負担も、一定以上の収入がある人から順に割合が増えてきています。

団塊世代が後期高齢者になる2025年には、さらに介護保険の財政は逼迫することが予想され、この制度は20年目を迎える今、大きな曲がり角にきていると言ってもいいでしょう。

膨大なデータをもとにAIがケアプランを作成

高齢化の進展と財政基盤の逼迫を受けて、介護の世界も否応なく変化を求められています。それを象徴するかのように最近注目されているのが、介護分野へAIを導入しようという動きです。

介護保険制度では、要支援、要介護といった介護度のランクごとに、利用できるサービスの給付額が設定されており、ケアマネジャーがそれぞれの利用者にふさわしいプランを作成します。これがケアプランです。このケアプランの作成には、複雑な計算や事務処理能力が要求されるのですが、いま、このケアプランの作成にAIの助けを借りようという動きが加速しているのです。

これらのサービスの中にはすでに製品化されているものもあります。そのひとつである株式会社シーディーアイのケアデザイン人工知能は、介護を必要とする人のADL(日常生活動作)、心身の状態などを入力することで、これまでに集積した膨大なデータを照らし合わせて複数のおすすめプランを提示。そのプランをもとにサービスを追加したり変更できるようになっているとのことです。

株式会社シーディーアイのケアプラン作成人工知能は、地方自治体が集積した膨大なケアプランのデータをもとに、その人に最適なプランを選び出すものだということです。

しかし、介護の設計図であるケアプランの作成をAIに委ねるというと、介護がオートメーション化して人間ならではの配慮や真心が失われてしまったり、ほんとうにその人に寄り添ったケアプランが作れなくなるのでは、との懸念を抱く人も少なくないでしょう。

もっとも、こういった人工知能を運用する会社は、ケアマネジャーからケアプラン作成の役割を奪うのではなく、ケアマネジャーがAIの出したプランを参考にしながら自分らしいプランを作ることで、事務処理にかかる時間を少なくし、本来の人対人の業務に時間を割けるようになってほしいとの思いも込めてリリースしているそうです。

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