コロナ禍の社会に求められる、対話の力で精神病を癒すオープンダイアローグ
フィンランド発祥の精神医療
近年日本でも注目を浴びている「オープンダイアローグ」は、フィンランド発祥の精神医療の方法論で、本人の意見を否定せず、耳を傾けて検討することで、本人の病気を癒す手法のことです。薬が重視される現代の精神医学において、薬を使わず対話で治療するというそのシステムは驚くべきものですが、よく考えると実はこれは古くて新しいやり方であるとともに、コミュニケーションが断絶されるコロナ禍の世界において、より注目されるべきなのかもしれません。
「収入3割以上減」なら申請すべき、コロナの影響に伴う国民健康保険料減免制度
全額免除や80%免除も
コロナによる経済難の影響を受けやすいフリーランスや非正規雇用の人たちにとって、国民健康保険料の納入はかなりの負担ですが、今年はコロナウイルスの影響で収入が減少した人を対象に、保険料の減免措置が行なわれています。条件によっては、保険料の全額免除や80%免除もありうるこの措置は、知っておくに越したことはありません。
映画館の休館を受けてオープンした「仮設の映画館」で注目される映画「精神0」
老いや病気と向き合う
新型コロナウイルスによる映画館の休館を受けてオープンした、インターネット上の「仮設の映画館」で、想田和弘監督の観察映画「精神0」が注目を集めています。岡山県の精神科クリニックの精神科医とその妻、患者たちをとらえたこの映画には、老いや病気と向き合いながら、私たちはどのように人生に希望を見出せばよいか、問いかけてくるような内容になっています。
家族を介護するケアラー、収束の見えないコロナ禍で苦境に
緊急アンケートで見えてきたもの
無償で家族を介護しているケアラーは、制度の網からこぼれやすく、さまざまな苦労を強いられています。この3月に、埼玉県で全国初となるケアラー支援条例が成立したことは前進ですが、このコロナ禍によって、ケアラーの人たちもかつてない苦しい状況に身を置いています。日本ケアラー連盟が実施した緊急アンケートの回答からは、その悲痛な声が浮かび上がってきています。
「コロナうつ」という言葉も…体調を崩すメンタルヘルスの当事者が急増
「できる範囲のいつもどおり」を心がけよう
我々の生活を一変させた新型コロナウイルスの脅威によって、調子を崩すメンタルヘルスの当事者も急増しています。認定NPO法人コンボの理事で、自らも当事者である佐々木理恵さんは、こうした人たちに向けて声明を発表。この状況に対応するための心のあり方について訴えました。
女優の古村比呂さん「がんとリンパ浮腫について安心して話せる場を作りたい」
病気を乗り越えるには精神面での支援が欠かせない
重い病気を経験した人にとって、本音を明かせる同じ病気の仲間は、何よりも貴重な存在です。子宮頸がんによる子宮全摘手術と、それに伴うリンパ浮腫を患った自らの経験を土台に、病気の話を分かち合える集まりを主宰してきた女優の古村比呂さんは、よりセキュリティの高い交流サイトの構築を目指して、クラウドファンディングを始めています。
難病患者の就労支援の拡充を目指して「難病手帳の制度化を考える会」が発足
無理せず仕事を続けるために
難病患者の治療は長期に及びますが、身体障害者や精神障害者のような手帳制度がないため、障害者枠での求人に応募することができず、就職では難しい状況に置かれ続けています。このような現状をなんとかしようと、長年難病患者の就労支援に取り組んできた中金竜次さんは「難病手帳の制度化を考える会」を発足。難病患者同士の情報交換に取り組むとともに、官庁や社会へのアピールを進めていくと話しています。
介護のケアプランをAIが主導する日がやって来る?
背景には介護保険財政の逼迫
介護保険制度は発足から今年で20年目の節目を迎えますが、その財政は逼迫し、保険料の値上げや自己負担率の増加などが続いています。そんな中、注目されはじめているのが、介護の設計図であるケアプランの作成に、AIを利用しようという動きです。果たして介護という人間の尊厳に関わる分野を、AIに携わらせることに不安材料はないのでしょうか…?
罪を犯した受刑者たちの姿を映した初めての映画「プリズン・サークル」
人は犯した罪に向き合うことができるのか
1月25日から公開のドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」は、これまでもアメリカの受刑者を捉えた映画を手がけてきた坂上香監督による、日本の刑務所の内部を撮影した作品です。カメラに映し出される受刑者たちと、彼らが参加する「TC」というプログラムの様子は、人間は罪に対してどう向き合えるのかという命題を観客に問いかけてきます。
発達障害の特性を強みとして活かす、1000回開催されたワークショップ
社会適応ではなく、社会活用を目指す
サービス業などの人間相手の産業が主流となった現代の日本では、発達障害と診断される人の数が増えています。発達障害の当事者であり、コミュニケーション力向上のためのワークショップを1000回以上開催してきた冠地情さんの初めての著書が今回発売されました。その本「発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ」(講談社)には、発達障害の特性を強みとして活かすための技法が詰まっています。
困難を極める"多胎育児"、「ネガティブな感情を持ったことがある」は93.2%
100人に1人の妊婦が多胎児の親となるいま、決して他人事ではない
認定NPO法人フローレンスが実施したアンケート調査により、多胎育児家庭の93.2%はネガティブな感情を持ったことがあることや、外出の困難、睡眠不足などの、過酷な現状が明らかになりました。地縁血縁による支えがかつてよりも見込めなくなっているいま、双子や三つ子を育てる母親のためには、それを支える社会的なサポートが何よりも必要とされています。
発達障害や精神障害の人が働きづらい社会で、離職せずに続けられる仕事とは?
特性を活かした働き方をしたい
障害者雇用促進法により、企業には2.2%の割合での障害者雇用が定められています。それに基づいて、精神障害者の雇用も広まってきていますが、たとえ障害者雇用で就職しても、なかなか職場に定着しないといった課題を抱えているのも事実です。障害者が特性を活かしてパフォーマンスを発揮するには、労働時間にとらわれない柔軟な勤務体系も必要なのでは? 慶應義塾大学商学部教授で、『新版 障害者の経済学』の著者の中島隆信氏はそう提言します。
子ども分野の新国家資格の創設案は、現場職員の声を反映していない?
虐待事件に対処するための最優先事項とは
初公判が行なわれた、目黒区の女児虐待事件の父親の裁判員裁判。児童相談所が事件を防ぎきれなかったことが問題視されました。続発する虐待事件などを受けて、厚生労働省はいま子ども分野の新たな国家資格の創設について論議するワーキングチームを開いていますが、難関の国家資格を新たに作るより先に、児童福祉の現場職員の待遇改善のほうがまず必要とされているのではないでしょうか。
自宅で最期を迎える人は12.6%、死をめぐる日本の課題
映画「人生をしまう時間(とき)」から見えること
人生の最期を住み慣れた自宅で迎えたいと考える人は多いと思いますが、自宅で亡くなった人の割合は12.6%に留まるといいます。その低い割合は、自宅で迎える最期がどのようなものか、十分に想像できないことも影響しているかもしれません。9月21日公開の映画「人生をしまう時間(とき)」は、在宅で最期を迎える人々の姿がまざまざと映し出されています。
精神科の医療費が"3割負担から1割負担"になる自立支援医療制度
「うつ病は心の風邪」なんかじゃないから知っておきたい
精神科の治療は長期にわたることが一般的なため、診察代と薬代は、トータルにするとそれなりの額になります。そこで、自立支援医療制度という仕組みを利用すると、負担額が3割から1割になり、支払う額は3分の1に。精神科に継続的にかかる人なら利用した方が良いこの制度の申請の方法について説明します。
マンガ「健康で文化的な最低限度の生活」で描かれる子どもの貧困とは
「子供の貧困、7人に1人」から見えてくること
先の参院選では「子供の貧困」も争点のひとつになりましたが、生活保護を扱い、リアリティで定評のあるマンガ『健康で文化的な最低限度の生活』でも、最新刊では子供の貧困がテーマとして扱われていました。その内容は、シングルマザーが子供を家に放置し餓死させた過去の事件を想起させながら、そのような事件を阻止するために、私たちの社会は何ができるかを問いかけるものになっています。
WHOの診断名に「ゲーム障害」が加えられ「性同一性障害」がなくなる
約30年ぶりの改訂で大きく変わる二つのこと
精神医学の世界で、DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)と並んで広く使われているWHO(世界保健機関)の診断基準の最新版が、2022年から発効するICD-11です。すでに公開されているその内容で特に注目されているふたつのポイント。それは、性同一性障害という障害名がなくなって「性別不合」になったこと。そしてもうひとつは、「ゲーム障害」という新しい疾患の導入です。時代によって移り変わる、疾病分類の持つ意味について考えます。