はじめに
次世代移動通信システム(5G)の海外での商用化が始まり、半導体セクターへの波及効果が出始めています。2019年後半に5G半導体特需でファウンドリやロジックが底打ちしましたが、2020年は半導体メモリも復調してモメンタム(勢い)が強まることが期待できそうです。
“5Gの夜明けの年”と言ってもよい2020年。半導体セクターにとってエポックメイキングな1年になると思われます。こうした状況下で、とりわけ好パフォーマンスが期待できそうな注目銘柄はどの企業なのか、考えてみます。
日本ではいつから本格化?
5Gの商用化は2019年4月に米国と韓国から始まり、5月には英国、7月にはドイツ、そして11月には中国でサービスが始まりました。日本も2020年の3月にKDDIとソフトバンクが、6月に楽天モバイルがサービスを始めます。NTTドコモは明確に何月からという開示はしていませんが、「春」からサービスを開始するとしています。
3Gや4Gの時と同様に、5Gも最初はユーザーの多い都市部からサービスを始めます。その後、少しずつ郊外に基地局が整備されることになります。
5Gがこれまでと少し違うのは、周波数帯を6ギガヘルツ帯とミリ波帯の2つに明確に分け、2段階で高速化が行われることです。
昨年から商用化が始まった5Gは、「サブ6」と呼ばれる6ギガヘルツ以下の周波数帯を使ったものです。4Gの周波数帯である2ギガ~3.5ギガヘルツに近く、技術的なハードルが低いこのサブ6の通信網が先に整備されます。その後、2021~2022年頃から30ギガヘルツ帯以上のミリ波の基地局整備が始まります。
5Gが与えるインパクトはいかほどか
よく5Gは4Gに比べて通信速度が20倍、伝送遅延が10分の1、同時接続可能な端末数が10倍と言われますが、これらはミリ波帯を使うことで初めて実現します。ただ、ミリ波は高速ですが、電波の減衰が早く、障害物にも弱いため、あまり遠くに届きません。このため、マッシブMIMOやビームフォーミングという新しい通信技術を導入するほか、小さい基地局(スモールセル)をたくさん設置します。
このスモールセルの設置が曲者です。5Gの通信網整備は4Gとはまったく比較にならないくらい大変で、時間がかかります。しかし、これは半導体産業にとってプラスです。踊り場のない持続的な成長が可能になるからです。
たとえば、スマートフォンはサブ6のサービス開始時とミリ波のサービス開始時に、それぞれ買い替え特需が期待できます。今発売されている5Gスマホ(サブ6対応)のメモリ容量は4Gスマホの2倍から4倍でAI(人工知能)機能付きの高性能プロセッサが搭載されていますが、ミリ波に対応するスマホはさらに高容量・高性能化します。
<写真:ロイター/アフロ>