はじめに

収束後の中国の消費動向は?

こうした中、中国が消費など内需喚起策をとっていく方向は変わらないとみています。米中協議は「第1段階の合意」に達したとはいえ、中国の実質GDP(国内総生産)は2018年の前年比+6.6%から2019年の同+6.1%へ鈍化しており、輸出依存型から内需主導の成長へ舵を取っていくと思われます。

中国の内需は、可処分所得の増加につれて、従来型の「モノ消費」から、体験を重視する「コト消費」へのシフトが進んでいます。品質や安全性を重視した高額商品の購入も人気。「消費のアップグレード」策による消費の多様化やサービス消費の拡大は、今後より一層推進される見通しです。

2016年のサービス消費拡大策に続き、中国政府は2019年8月に「流通の発展加速と商業消費の促進に関する意見」を公表しています。都市部ではコンビニのスマート化やブランド化の加速、農村部では電子商取引の普及や農産物流通の拡大を目指す「インターネット+農産物流通」などを実施していく方針です。

コミュニティの生活関連施設の最適化を目指す「インターネット+コミュニティ」、新しい流通業態の発展を促す「インターネット+中古品」、夜間や休日の文化・観光・レジャー・スポーツなどの消費拡大を促す施策も盛り込まれました。輸入品の増加に備えた外国製品の消費需要喚起や、新エネ車・グリーン家電などの購入に対する金融支援も行われます。

中国の小売り売上高

オンライン消費は2018年から2019年にかけてやや鈍化基調にありましたが、今年は増加する見通しです。都市部(74.6%)に比べてインターネット普及率が低い農村部(38.4%)でも旺盛な需要がみられ始め、物流や決済などインフラのデジタル化が加速する動きが出ているためです。

未開拓のオンライン消費者は少なくとも1億人はいると推測されます。ネット通販や自動車、飲食、旅行、教育、保険に加え、趣味や健康、各種サービスに至るまで、消費関連企業の裾野は広く、この恩恵を受ける企業が注目されるでしょう。

<文:投資情報部 山田雪乃>

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